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	<title>ダバロ帝国保管庫</title>
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	<description>自分用二次創作ネタ置き場。カテゴリ内で下のものほど新しいらしい。</description>
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		<title>レザ蛍</title>

		<description>2021年に出した本から。

冒険者協会か…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 2021年に出した本から。

冒険者協会からの依頼を受け、私はモンドからそう遠くない場所に新しく発見された遺跡を調査しにいく準備をしていた。
なんでも、少々変わった遺跡らしい。
そんな場所にはきっとそれはもう貴重な宝物なんかが眠っているに違いないと、欲に目が眩んだ冒険者たちが挑んでは夢破れて散っている……らしい。（命に別状はなく無事モンドに帰還してはいるのだが。冒険者という生き物はどうして話を大げさにしたがるのだろうか）
聞いた話によると、中は入り組んだ迷宮になっており、突入するたびにその形・環境を変えるという。
そして、環境が変われば住み着いている魔物も変わる。そのことと、所狭しと（これもおそらく誇張だろう）仕掛けられているという一風変わった罠が一層、迷宮の攻略を難しくしているようだった。
まさに難攻不落といった体だが、だからこそ人を惹きつけてやまないのだろう。
私も、その魅力に惹かれた人間の一人だった。
璃月では、自らの仙力で造り上げた迷宮に住む仙人に出会った。
彼女の作る迷宮も、易々とは突破できない創意工夫に満ちたものだった。
今回の迷宮も、そのような不可思議な力に満ちた存在が造ったのかもしれない。
もしかしたら、遠い昔に離ればなれになってしまった、私の兄について、なにか知っているかもしれない、という淡い希望を抱いてもいた。
とはいえ、前例のないような秘境に一人で挑むのは流石に不安だ。
誰か、誘えるような人はいたかな……と考えながら冒険に持っていく料理の準備をすすめる。
鳥肉のスイートフラワー漬け焼き、漁師トースト、テイワット風目玉焼き……。
「あれも持っていこうぜ。ニンジンとお肉のハニーソテー！」
　よだれをたらしながらパイモンが言う。
「そんなに持っていけないよ。それはあとで鹿狩りで一緒に食べよう」
そう言うと、やったぁ！約束だぞ！と飛び上がって喜ぶ。
そうこうしていると、匂いを嗅ぎつけたのかどこからかレザーがふらりと現れる。
「あ、レザー。どうしたの」
「腹、減った……」
　見ると、髪に木の葉や枝が絡まっていて、少々焦げ臭い……。
大方、クレーにでも振り回された帰り、といったところだろうか。
　さすがのレザーでも彼女は手に余るらしく、顔にはっきりと疲労の色が浮かんでいた。
しょうがないなぁ……と言って、先程作ったばかりの漁師トーストを一切れ彼に渡す。
途端、よほど空腹だったのか、むぐむぐと口に詰め込んであっという間に平らげてしまった。
「どう？おいしかったかな……？」
「……うん。お前が作るもの、なんでもうまい。オレ、好き」
口の周りについた食べかすを手で拭いながら彼が答える。
「そ、そう？よかった」
その返事を聞いて、自分の顔が熱を帯びるのがわかった。見られまいと、まだ火にかかっている鍋の方へとさっと向き直る。
……レザーは時々、こういうことをサラッというから困る。こちらをからかっているというわけではなく、純粋な気持ちで言っているのだから、余計にだ。
ストレートすぎて、どう反応していいかわからない。
「料理、オレも手伝う……」
そんな私の気を知ってか知らずか、レザーがぬっと私の肩越しに顔を出しながら耳元で静かに言う。
 彼の吐息が触れるのを感じて、小さく体が跳ねるのを感じた。気づかれてないといいけれど……。
「じゃ、じゃあ、モンド風ハッシュドポテトを作ってほしいな」
その震えをごまかすように、彼から目をそらしながらそう答える。少々不思議そうな顔をしていたが、わかった、と呟いて作業に取り掛かってくれた。
よかった、気づかれていないみたいだ。
ふぅ、と安堵のため息をついて、私も彼の隣に立ってじゃがいもを潰していく。
自分の分を作りながら時々彼の様子を見やると、少々苦戦していた。人間の料理にはまだ慣れていないらし。
それでも、ぎこちない手付きで一生懸命に作っている姿をみると手伝ってあげたくなるけれど、それは彼のためにならないだろうと思いぐっと我慢する。
――そんなこんなでなんとか丸く捏ね終えたじゃがいもに、次は衣をつけて揚げていく。
鍋に入れると、じゃがいもたちは回転しながらジュージューという食欲を誘う音をたてた。
そろそろ揚がったかな、と鍋から取り出すとどれも見事なきつね色に仕上がっていた。
レザーの作ったものは、狼の肉球を模した形をしていた。
それらを見て、可愛らしさに思わずふふ、と頬が緩む。
「お前、どこへ行く？」
ふと、レザーが口を開く。
「オイラたちはこれから新しく見つかった遺跡へ冒険に行くんだぞ！」
私が緩みきった表情筋のコントロールを取り戻す前に、パイモンがどこか得意げに答える。
「遺跡……」
「うん。今まで無いくらい変わった遺跡らしいよ」
「お前、ひとりで行く？」
「う～ん……パイモンと、誰かもうひとり付いてきてもらおうと思っているけど、まだ誰と行くかは決まってない……」
「じゃあそれ、オレが行く」
　突然の申し出に少々面食らうが、有り難かった。
それに、レザーはこう見えて結構頑固だ。言い出したら曲げないだろう。
「蛍、レザーは結構向いてるんじゃないか？」
パイモンの言う通り、彼が一番今回の調査には適任かもしれない。勘が鋭いし鼻もきくから、私ではわからないような事に気がつく可能性がある。
「うん。じゃあ一緒に行こうか」
◆
レザーは私の友達だ。奔狼領で出会って、それから一緒に旅をするようになっていた。
狼に育てられた彼は、リサさんに多少教わったとはいえ人間の文化にはあまり詳しくなく、言葉も拙い。
それでも、狼の言葉についてはとてもよく知っている。
例えば彼は私に『ルピカ』という言葉を教えてくれた。森に住む狼たちの言葉で、人間の言葉にすると『家族』という意味らしい。
彼は私のことを『友達』だと言って、同時に『ルピカ』だとも言った。
狼の群れでは、『友達』も『家族』もあまり変わりない意味なのだろうか？
今度、図書館に行ってリサさんに聞いてみよう。きっと彼女なら狼の言葉にも詳しいだろう。（代わりに何を頼まれるか、わからないけれど……）
何にせよ、彼が私に教えてくれた言葉がどのような意味でも、レザーが私にとって大切な仲間で、友達であるということは変わらない。
彼が私と一緒に走ったり、狩りをしたりするのが楽しいというように、私もレザーとそういうことをするのが楽しい。
そう、彼と私は『友達』だ。
でも、おかしい。
『友達』なら、どうしてさっきみたいに褒められただけで、必要以上にドキドキするのだろう？
どうして彼が他の女の子……クレーとかと楽しそうにしていると、面白くないと感じるのだろう。
彼女も、レザーに、もちろん私にとっても『友達』だから、なにもおかしなところは無いはずなのに……。
他にもどうして、と思うことはたくさんある。
自分で自分の感情の理由がわからない、こんなことは初めてだと思う。
「おい蛍！　鍋が吹きこぼれちまうぞ！」
パイモンのその言葉ではっと我に返り、慌てて火加減を調節する。幸い、料理は無事だった。でも、こんなにぼーっとするなんて、やっぱりおかしい。
……今は準備に集中しないと。気を入れ直すように頭を左右に振り、用意した料理や薬剤をカバンに詰めこんでいく。
最後に、自分の武器に刃こぼれ等異常がないか念入りに確認する。
武器は、敵を斬る刃であり自分の身を守る盾でもある。だから、日々の手入れや点検というのはとても大事だ、と昔にお兄ちゃんが言っていた。
そう言われてから、私はそれらを欠かしたことがない。慣れない最初こそ危なっかしかったものの、今はもう目をつぶっていてもできる。
異常がないことを確認し、いつものように光の粒子に変換して仕舞いこむ。
「ふぅ……」
伸びをしながら空を見あげると、もう太陽は地平線に近い位置まで沈んでいた。
備えあれば憂いなしとはいえ、思ったよりも準備に時間がかかってしまった……。
今から出発しては現地につくのは夜中になってしまう。
「今日はもう休んで、明日の朝出発しようか」
「うん」
「そしたらそろそろ夕ご飯にしよう。鹿狩りでいいかな？」
それともさっきつまみ食いしたから満腹だろうか。
「うん。いい。オレ、まだ食い足りない……」
そんな私の考えを見抜くようにレザーが言って、同時にぐぅという音が聞こえてきた。
その間の抜けた音に思わず吹き出してしまう。
「本当にお腹が空いているんだね」
「オイラも腹ペコだぞ！」
「はいはい。すいません。三人で」
「ご注文は……「ニンジンとお肉のハニーソテー！」かしこまりました」
「えっと、それを三人前。あとは……」
これと、これと、これ……と注文を済ませる。
誰か食事をするのは、とても楽しい。
お兄ちゃんと離れ離れになって、それからパイモンを釣り上げるまで一人きりだったから、余計に今この団欒の時間をそう感じるのかもしれない。
この楽しい時がずっと続けばいいのに……と願うが、その願いを叶えるのは難しいと知っていた。
私には使命がある。たとえどれほど名残惜しくとも、歩みを止めて留まってはいられない……。
わかっていても、そう思うとなんとなく寂しかった。
◆
無事に食事を終え、会計を済ませて、夜のモンドを歩きつつ三人で宿屋へと向かう。
レザーは辺りを見回して警戒しつつ私の隣をぴったりとついてくる。
街中なのだから、そんな危険なこともないと思うのだけれど……きっと癖になっているのだろう。
宿屋に到着すると、ようやくそんな彼の張り詰めた雰囲気もとけた。
「レザー、同じ部屋でもいいよね？」
「うん。いい……」
本当は別室のほうが良いのだろうが、あいにく懐に余裕がない。
「すいません。シングルツインで一部屋」
代金を払い、鍵を受け取って割り当てられた部屋へと向かう。
鍵を回して扉を開けた途端、ベッドに飛び込もうとするレザーの首根っこを掴んで慌てて止める。
うぐ、といううめき声が聞こえてきたが無視する。
「まって。先にシャワーを浴びなきゃだめ」
「……お前と一緒じゃなきゃ、やだ」
「えっ」
　全くもって予想していなかった台詞に面食らって、数秒思考が停止してしまう。
「そ、それはダメだって！　一緒に寝るとか、それくらいならいいけれど……」
「でも師匠は一緒にはいって、洗ってくれた……」
そう言って、うなだれてしまう。
リサさん、そこまで面倒を見ていたのか。
「とにかく、だめったらだめ。着替えを用意しておくから、早く入って」
むぅ……とまだ不満そうな彼を浴室に押し込む。
観念したらしく、それ以上の抵抗はなく、服を脱ぐ衣擦れの音が扉越しに聞こえてきた。
見た目からは想像しがたいけれど、彼は結構甘えたがりの気がする……。
ともかく、着替えの用意をしなければ。
箪笥を開けて、部屋に備え付けの寝間着を引っ張り出す。
サイズは……まあ、問題ないだろう。
着替えここに置いておくからね、と声をかけるとわかった、と返事が聞こえてきた。
レザーが出るのを待つ間ベランダに出て、夜風がそよそよと私の髪を揺らし、頬を撫でて行くのを感じながら夜のモンドを見下ろす。
「こうして見ると、なかなか壮観だな！」
パイモンの言葉を聞いて、下を見下ろしてみる。
眼下に広がる月に照らされた町並み、家々に灯る暖かな光、酒場から風にのって聞こえてくる笑い声や吟遊詩人の奏でる旋律……。
「そうだね」
そう返事をしたけれど、それらの一切が今の私にとってはどうでもよかった。
「おい……おまえ、最近様子がおかしいぞ？　なんかあったのか？」
流石に何か変だと察したのか、パイモンがそう聞いてくる。遅かれ早かれバレてしまっていただろうし、素直に全部話してしまったほうが良いだろう。
もしかしたら、誰かに話すことで霧も晴れるかもしれない。
「実はね……」
そうして私はふわふわと浮いている小さな相棒に、洗いざらい全部話すことにした。
「ははーん……それは！　ズバリ！　”恋”ってやつだな！」
えっへん、と腰に手を当てて得意げに言い切る。
「やっぱりそう、なのかな」
「そうに決まってるぞ！　安心しろって！　オイラも応援するからさ！」
「うん。ありがとう」
そうは言ったものの、期待とは裏腹に心にかかった霧は全く晴れないどころか、かえって濃くなったような気がした。
この、名付けようのない感情――もしかしたら感情未満かもしれない――たちを、大きな箱に詰め込んで、”恋”という綺麗な言葉で包装し、見ないふりをして、自分を誤魔化して、それら一つ一つと向き合うことを放棄しても良いのだろうか。
この、彼と一緒にいると嬉しいという気持ちと、彼と仲良くしている他の女の子なんか居なくなってしまえばいいと思ってしまう醜い気持ちが、果たして源泉を同じくするものなのだろうか……。
この世界にとって、居るべきではないのは――異物なのは――私の方なのに。
この問題は結局、いくら考えても結論を出すことはできないだろう。
それに、お兄ちゃんを見つけ出すという私の究極の目的には関係ない。
むしろ、邪魔になるかもしれない。
レザーを含めて、今まで出会ってきた人たちと敵対するようなことにはならない、とは言い切れないのだから。
全部なかったことにして、何も知らなかったことにして、何も感じなかったことにして、心の片隅に追いやって、蓋をして忘れてしまうのが一番良い。
「蛍、出た」
思考が一応の着地点を見つけたところで、湯からあがって着替えを終えたレザーが脱衣所から顔だけをだして私を呼ぶ。
きちんと服を着てはいるが、乾かしていないのか髪が濡れたままだった。
「髪を拭いてあげるから、タオルを持ってきて」
そう言って、彼を椅子に座らせ水分を含んだ髪をわしわしと拭いてやり、ついでに櫛も通してあげる。
触れられるのは嫌がるかなと思ったけど、意外にもされるがままで、終わる頃にはふわふわの毛並みになっていた。
「はい、終わったよ。それじゃあ、私もお風呂に入ってくるから。ここで待っていて」
わかった、という返事を聞いて風呂場へと向かい、服を脱ぐ。
シャワーで頭から温かいお湯を浴びると、水が何もかも流してくれるような気がして、少しだけ気持ちが楽になったように感じた。
髪と体を洗い終え体を拭き、髪を乾かして（風元素を使って楽をした）、着替えてベッドのあるほうへ向かおうとする。
しかし、脱衣所から一歩踏み出すやいなや、私の視界は一面銀色に覆われた。
何が起こったのか一瞬理解できなかったけれど、背中に回された手から伝わってくる熱と、髪の匂い、そして耳元で私の名を囁く低い声でレザーが抱きついてきたのだとわかった。
すりすりと、まるで獣が自らの縄張りに匂いをつけるときのように、首筋に頭を擦り付けるような動きをしてくる。
こういうことは今回が初めてではないけれど、やっぱり慣れない。
前に、あまりにもきつく抱きしめられて苦しいものだから「離して」と言ったらものすごく悲しそうな顔をされたことがある。
それ以来、彼が満足するまでしたいようにさせてあげている。彼も力加減に慣れてきたのか、以前のように苦しいということはなくなった。
ひとしきり頭を擦り付けた後、最後の確認とでもいうように私の首筋に鼻先を押し当てて、すんすんと匂いを嗅いで、ようやく（といっても数分ほどだろうけど、私には永遠にも感じられた）解放してくれた。
「レザーはいつもこうするけれど、どんな匂いがするの？」
　少し気になって、そう聞いてみる。
「石鹸と……甘い？　優しい、匂い。」
「……そうなんだ。変じゃなければよかった」
　安心した。臭い、とかであったら立ち直れないところだった。
「変じゃない。オレ、好き」
　あぁ、またそうやって何気なく、そういうことを言う。
部屋が暗くてよかった。今の私の顔を見られずにすむから。
「お、終わったなら向こうに行ってもう寝よう。明日は早いうちに出発するからね」
　動揺を隠すように一息にそう言って、自分のベッドに横になる。パイモンはもう一足先に眠っていた。
　しらずしらずのうちに疲労が溜まっていたのか、すぐに眠気が襲ってきて、目蓋が重くなってくる。
おやすみ、と言ったものの返事が返ってきたかどうかもわからないほどだった。
◆
窓から差す微光で、私は目を覚ます。
まだ少し、眠い。もう少し布団の温かさに浸っていたい……。
待って。なんだかおかしい。
温かすぎる。
明らかに布団でもパイモンでもない熱源を肌に感じる。
急激に目が覚めてきて、薄ぼんやりとしていた視界も鮮明になってきた。
そして、目の前に現れたのは――なんとなく予想はついていた――まだ寝息をたてている彼の……レザーの寝顔があった。
なぜ、と問うだけ無駄だろう。これくらいならいい、と言ったような気もするし……。
それにしても、出会ったばかりの頃はずっとしかめ面で、部屋の中でもピリピリしていて落ち着かない様子だったけれど、最近は宿の中は大抵の場合安全だとわかってきたようで気を抜いた表情を見せてくれることも多くなってきた。
良い変化、なのかな。そうであってほしい。
　起きなくてはいけないこと忘れて彼の顔を眺めていると、どういうわけか、彼の頬に触れてみたくなる。
衝動的に、しかし起こさないようにそっと、腕をのばす。
やはり勘が鋭いのだろうか。触れる一歩手前で腕を掴まれ、銀灰色に縁取られた真紅の瞳が何も言わずにこちらを見据えていた。
「あ……。お、おはよう」
　あまりのバツの悪さに耐えられなくなり、目を逸しながらなんとかその言葉だけを絞り出す。
　一体いつから起きていたのだろう。まったくもってそんな気配はなかったのに……。
レザーは、気配の主が私だと確認すると拘束の手を緩める。
　そのまま放してくれると思ったのだけれど、そのままぐい、と彼の方に引き寄せられる。
　抵抗するまもなく、抱き枕のように彼の腕の中におさまる形になってしまった。
「……ねむい」
「起きて。出発しないと……」
　寝間着を着ていたはずが上は脱いでしまったのか、さらけ出されている彼の胸板をぺしぺしと叩いて抗議する。
　しばらく叩いたり揺すったりしているとぐぅ……と一声発してのそり、と起き上がった。
「おはよう……」
「おはよう。すぐ準備して。ご飯を食べて出ないと」
◆
　そんなこんなで慌ただしいながらも、モンドを後にして冒険者協会から教えてもらった場所へと向かう。
　早めに出たのもあって、昼前には目的地へ到着していた。
　入口あたりから中を覗いて見るが、地下へと続く階段以外なにも見えなかった。
「ここだよ。準備はいい？」
「うん。オレが先にいく」
　そう言って先陣を切るレザーのすぐ後ろに私、そしてパイモンという隊列で進むことになった。
　――一歩踏み入ると、そこは四方を壁に囲まれている広い空間で、樹木、低木や下草が生い茂り森のようになっていた。
　どういう仕組なのか、たしかに遺跡の中、地下へと降ったはずなのに、天井を見上げると外と変わらないような空が広がり、太陽のようなものまで浮かんでいた。
　陽光が木葉越しに、私達へと降り注ぐ。
　木々の先に、奥へと進むための扉が見える。閉ざされているようだから、きっとどこかに開くためのスイッチかなにかがあるはずだ。
　話によると、部屋に最低でも一つは扉の鍵以外の罠があるという。
「おい！これ、なんかおかしいぞ！」
　数歩進んだところで、そんな叫びが聞こえてきた。
　その声に後ろを振り返ってみると、パイモンが一人だけ、森に入れず地上への階段に取り残されていた。
　どうやら見えない壁のようなものが突然出現したらしく、どんどんと叩くような動作をしている。
「蛍ぅ！どうにかしてくれえ～」
　なにか手がかりになるようなものは無いかと、さっと辺りを見回すが、仕掛けを解除できそうな装置の類は今いる場所の近くには見当たらない。
　これも、この遺跡に仕掛けられた罠の一つだろうか……。
　それを外で半泣きになっている彼女に伝えようとするが、どうやら中から外への音は一切、この見えない壁に遮断されているらしい。
「なんて言ってるんだ？　全然聞こえないぞ！　どうにかできないか、オイラちょっとみてくる！」
　と言って、フラフラと飛んでいってしまった。
上に魔物の気配はなかったから、危険は無いだろうとはいえ、心配だ。はやくこのあたりを探索してどうにかする手立てを見つけたほうがいいだろう……。
でも、どうやって？
見回すが、この状況を解決する手がかりになるようなものは見当たらなかった。
「レザー、このあたりに何か危険なものはありそう？」
「ない……と思う」
　自信がないのか、困ったように眉を下げている。
　それでも、私は彼のことを信頼しているから、その言葉を信じることにした。
「じゃあ、二手に分かれてこのあたりを探索しよう。なにか見つけても、不用意に触れないで。日が暮れる前にまたここに戻ってきて、見つけたものを明日二人で確認しにいこう」
「わかった」
　そう言って、私達は別々の方向へと別れた。
　日が出ていても薄暗い森の中を、木の裏や、茂みの中になにか潜んでいないか注意しながら、草木をかき分けてゆっくりと進む。
　この部屋は、想像していたよりずっと広い。
　しかも奥に更に別の部屋があるというのだから、一体全体どれだけ広大な迷宮が広がっているのか、考えると、目眩がしてきそうだった。
　こんなすごい迷宮を造った人なら、きっとお兄ちゃんのこともなにか知っているはず……。
　根拠のない思い込みだが、そう考えると歩き通しで疲れた足にも元気が戻るのだった。
　――瞬間、足元からカチリ、と聞き慣れない音がする。
　嫌な予感がして、冷や汗が背を伝う。
　恐る恐る下を見ると、何かスイッチらしきものをしっかりと、踏みしめていた。
　周囲の地面と、私の体重で沈んだスイッチの隙間から、シューシューと薄桃色の気体が吹き出し始める。
　とっさに鼻と口を覆うが、甘ったるい匂いのするその煙を少し吸い込んでしまった。
　しくじった。気づけたはずなのに。
　なにせ視界が悪いから、奇襲を受けるのを避けることばかり考えていて、足元が疎かになっていた。
　吹き出す煙を止めようと、噴出孔を手で覆うなどしてみるが、当然意味はなく、指の間からすり抜けてあっという間にこの大きな部屋に広がる森全体に満ちていった。
　きっとレザーも、私のこの失態に巻き込まれてしまっているだろう……。
　例の罠は、しばらくシューシューと煙を吹いていたが、やがて何も吐き出さなくなった。
　あたりは薄桃の霧で覆われ、ただでさえ悪い視界が余計に悪くなってしまった。
　煙を吸ってしまったせいか、少しぼんやりともするし、踏んだり蹴ったりだ……。
　がっくりと肩が落ち、思わずため息まで漏れた。
（立ち止まっていても仕方がない。先に進もう……）
そう決意したところで、にわかに周囲に気配を感じる。
周囲の茂みから、ガサガサとうるさい音をたてて丘々人(ヒルチャール)たちが飛び出してきた。
あっという間に囲まれ、進路も退路も、塞がれてしまう。
小型だが、数が多い。その上先手を取られてしまった。
自分のあまりの情けなさに無意識に舌打ちが漏れる。
剣を抜くひまもなく、ギャア、グギャアと彼ら流の雄叫びを上げて、棍棒を振りかざし飛びかかってきた。
　不意をつかれる形で火蓋を切られ、とっさに回避の姿勢をとるが、避けきれず腕にまともに食らい、衝撃で皮膚が裂かれる。
負傷させたとはいえ、一撃必殺のあてが外れたのか、狼狽する丘々人たちのすきを突いて体勢を整え、光の粒子に刃の形を与える。
一閃、銀刃が煌めくと、まず一匹が首から上を失い、薄桃の中に鮮血のアクセントを加えながら、地面に倒れた。
（まず一匹……ッ）
落ち着いて対処することができれば大した相手ではない。
そこから先は、一方的な殺戮だった。
風元素により生みだした突風で相手の隊列を崩し、一匹、また一匹と確実に仕留めていく。
　すべて片付けて我に返ると、体に染み付いている血液が自分のものか、それとも返り血かわからなくなるほどになっていた。
　すべて倒し終え、獲物を仕舞いふぅ、と一息いれる。
「痛……ッ」
緊張の糸が切れたのか、先程の腕の傷やその他の細かな傷（おそらく、枝にでも引っ掛けたのだと思う）が痛み始める。
あたりの様子を窺うが、危険はなさそうだ。今のうちに手当を済ませておくべきだろう。
そう判断して、戦場だった場所から少し離れた草地の上に座り込み、応急手当キットを取り出し、治療の準備を始める。
　突然、霧の中から現れた黒い影に前方から覆いかぶさられて、背中が地に打ち付けられ、膝のうえに広げていた治療器具が地面に飛び散った。
馬乗りになられたまま大きな塊を振りかぶられ、目の前に迫ってきたそれを、体をひねってすんでのところで避けた。
頭の横に大きな鉄の爪が突き刺さる衝撃が、内臓にまで響き、血の気が引く。
しかし、恐怖で凍りついた体を、聞き慣れた声が溶かした。
「血の匂い……ヒルチャール？」
「その声……レザー？　ちがうよ、私だよ」
「蛍……？」
「よかった。無事だったんだね。今までどこにいたの……」
　返事の代わりに、それまで私の両腕を抑えていた彼の腕が背にまわされ、抱き寄せられる。
　私も、無意識に、同じようにする。
　ぬるりとした感触……どうやら彼も魔物と一悶着あったようだ。
「蛍、ケガしてる。血、出てる……」
大丈夫とこちらが言う間もなく、傷口に彼の顔が寄せられて、次の瞬間、生温い舌の感触が腕を這う。
「な、なにを……」
「ルピカ、こうやってなおす……オレ、人間のやり方知らない。これしか、できない……」
　驚きはしたが、どうやら彼なりの気遣いらしい。こそばゆいけれど、そのまま彼の好きにさせることに決めた。
　レザーが、傷口周囲の汚れを丁寧に舐め取っていく。
たまに舌先が傷に触れ、痛みで身じろぎすると、じっとしていろと言わんばかりに抱き寄せられる。
そうやってしばらく、舐めたり、吸ったりして、彼なりの治療が終わったのか、ようやく唇が離される。
しかし、体の拘束が緩む気配はなかった。
「レザー……？」
　離して、と抗議の意味で軽く背を叩きながら彼の名を呼ぶ。
「蛍、オレ、なんかおかしい……」
　どんなふうにおかしいの、と聞くまでもなく、理解した。
　太腿のあたりに、なんというか、硬いモノがあたっている。
　戦いの後で昂ぶっているのだろうか？きっとそうだ。だって、その……この間、手でしてあげたばかりだし。（それだって何ら特別な関係にない者どうしでするのは異常な行為だということはもちろん、わかっている。でも、だって、あんなふうにねだられたら、仕方がないじゃないか……）
　しかし、仮に戦闘に由来するというのなら、毎回にではないにせよ頻繁にこうなっていないとおかしい。
　……私が充満させてしまった、あの霧のせいだろうか？
　おそらく、そうだろう。
直感的に、この霧の持つ効果を理解する。
多分、生き物の本能、特に生殖本能を刺激して、増大させる――有り体に言えば、発情させる――ものだろう。
そうであるならば、私も彼と同じ様になってないと説明がつかないが、本来は男、オスにだけ作用するように作られているものなのだろう。
しかし、私も先程から少し熱っぽく感じるのは、噴出孔の近くに居て、霧散する前の濃い状態のものを少量吸ってしまったからだと思う。（女に対しては遅効性という可能性も考えられるが、ないと信じたい）
　理屈は今はどうでもいい。とにかく、目の前のレザーをなんとか落ち着かせなければ……。
「れ、レザー、今は我慢して？」
「だめ、むり……」
「でも、こんなに血まみれで、汚れているし、臭うよ」
「……？　お前、いい匂い」
　そう言って、ますます私をきつく抱きしめ、下半身を擦り付けてくる。
　だめだ、完全に霧に惑わされている。聞く耳を持ってくれない。
　ここはもう、いちど彼の言うとおりにして、正気に戻らせてから落ち着いて脱出法を探るのが賢明だろう。きっとそうに違いない。
　（混乱しきった）思考が一応の着地点を見出したので、早速行動に移す。
「じゃあ、その……口でしてあげるから。下、脱いで」
　ん、と小さく返事をした彼がそうしている間、先程の自分が発した言葉に違和感をおぼえ、反芻してみる。
　私、今なんて言った？
　多分、いや確実に、口で、と言った。普段ならありえない。（手ならともかく……）
　とんでもないことになってしまった。しかし、今更撤回……というわけにもいかないだろう。
　こうなってはもう、腹をくくるしかない。
「じゃあ、始めるから、じっとしていてね」
　レザーの正面に座るようにして、すでに先走りで先端が湿っているソレに両手を添え、顔を近づけていく……。
　霧の発する甘ったるい香り、血、汗、諸々の体液の混ざった、くらくらと目眩のしてくるような匂いが鼻腔を抜けて、脳髄の奥深くに突き刺さる。
　歯をあてないよう注意しながら唇で包み込むよう、口に含む。私の口には少々大きく、少し苦しい。
　う……、と小さな呻き声がひとつ、頭上から降ってくると、私の頭にグローブ越しでもわかるほど温かい手が、軽く押さえつけるように添えられる。
　そのまましばらく、先の方を舐めたり、時折ちゅう、と吸ってみたりして、絶頂へと導いていく。
「……ッ！　蛍ッオレ、もう……」
　限界が近いのか、レザーの息が荒くなり、唸り声の混じったものになってくる。
「んぐ……ッ！？」
　突然、今まで添えられているだけだった腕に頭を強くおさえつけられると同時に、灼けるように熱い、あつい、白濁が喉奥で炸裂する。
　突きこまれたモノと、流し込まれた液体を外に出そうと、意思とは関係なく反射でえずき、のぼってくる胃の中身を吐き出しそうになり、どうにか彼を押しのける。
「う、ぐ……がはっ……おえぇ」
　げほげほと咳込み、地面に何もかもをぶち撒ける。
　口の中いっぱいに胃液と唾液と出された体液の混ざったなんとも言えない味が広がって、最悪というよりほかないが、これでレザーも落ち着いてくれるだろう。
これでようやく、本来の目的に戻ることができる……。
「蛍、大丈夫……？」
「だ、だいじょうぶ。すこし、びっくりしただけだから……」
少々強がって、そう返事をする。
「そっちこそ、もう平気？　平気なら、早く行こう。なんとかして脱出する方法を探さないと……」
口の端に残った液体を拭い、熱と疲労感でふらつく体をどうにか奮いたたせ、立ち上がろうとするが、徒労に終わった。
こちらに凭れかかってきたレザーと縺れるようにして、地面を転がる。
　幸い、柔らかい草の上だったので怪我をすることはなかったが、それでも痛い。
　一体彼は、どういうつもりなのだろう。
「まだ、熱い……。ごめん……」
　抑えようとしているのだろうが、そうしきれていない荒い吐息混じりにそう囁かれる。
真正面に揺らぐ真紅の双眸。
その奥に、獣欲の炎が揺らめいているのが見て取れた。
目を合わせていることができずに、視線をそらしてしまう……。
「れ、レザー……、だめだって。これ以上は……」
一度だけ、と許してしまったのが誤りだったのだろう。霧の影響も相まって、却って彼の中の獣を活気づかせてしまったようだった。
「どうして」
「どうしてって……。こういうことは、もっと、その、大切な人とするべきであって……」
　最後の方は、ほとんどむにゃむにゃと訳のわからないつぶやきになってしまった。
「お前、オレのルピカ。ルピカ、大切。お前、オレの大切な人……。」
「友達、友達はルピカなの？」
　ふと、そんな疑問が口をついて出る。
「友達は、友達。お前は友達で、オレのルピカ……」
「そう……。そうなら、いいよ」
　何がいいのか、もう自分でもよくわからなかった。
　思考も、何もかも全部、霧に覆われていく……。
「レザー、好き、すき、すき……」
　その言葉が彼に伝わることはなかった。
それらが声帯を抜けて、意味持つ言葉となる前に、彼の唇が私のそれを塞いで、全部その中に吸い込まれていってしまったから。
◆
――しばらくの間意識を失っていたらしい。
気を失う前、何があったのかはっきりと思い出せない……。
ただ目的も使命も何もかも忘れ、先の見えない霧の中、恍惚とお互いの熱を奪い合っていたあの時間は、魔霧が見せた幻影だったのだろうか。
……そうでないことを、まだ胎内に残る温もりと、隣でお腹を丸出しにして寝転がって、寝息をたてているレザーが物語っていた。
「レザー、レザー！　起きて……風邪ひくよ」
　ゆさゆさと体を揺さぶると、瞼が開いて、やがてのそりと起き上がった。
「ふぁ……おはよう」
　大きなあくびをしながら、眠そうに目をこする。
「おはよう。もう変なところはない？」
「うん……。大丈夫」
「じゃあ、行こう。パイモンが待ちくたびれて、干からびちゃう……」
　そうして、二人で歩き出す。
　霧はもうすっかり晴れて、ただ碧い空だけが、私達を見ていた。 ]]>
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		<dc:date>2026-01-18T17:20:58+09:00</dc:date>
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		<title>【R18】マゾツムリ(V.IIとふた女6)</title>

		<description>ここはアーキバス、再教育センター。とは…</description>
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			<![CDATA[ ここはアーキバス、再教育センター。とは建前上全く関係のないとされているマゾ性感専門店・最強イクセンター。
　終業後、人の気配もなく静まり返った社内でこの場所だけが煌々と、誘蛾灯の如き妖しい輝きを放っている。
　そこに訪う、影がひとつ――。
「いつもので」
　薄暗い店内のカウンターに、プラスチック製の四角い会員証を叩きつけながら、男の平坦な声がそう告げる。
　相手を見下しているのを隠しもしない態度と声色。顔面を横断するオプティカル・デバイス。一分の隙もなく丁寧に撫で付けられた髪。声の主は何を隠そう、ヴェスパー部隊第二隊長、スネイルその人であった。
「承知しました」
　幾度も繰り返されたやり取りに慣れきったボーイが、薄闇の向こうから返事をする。
「……待ちなさい。なんです、このＧ13オプションというのは」
　変わり映えのしない、とうに見飽きたメニュー表に、見慣れぬ文字列が追加されていれば嫌でも目に付くだろう。それはスネイルもそうだった。目敏いこの男のこととなれば、尚更だ。
「あぁ……それですか。さすが閣下、お目が高い」
「世辞はいい、なんなのかと聞いているのです」
「新入りですよ、レッドガンの。本人です。期間限定のアルバイトです。新型パーツが出たとかで、急遽金が必要なんだそうです」
　Ｇ13と言えば、独立傭兵に貸与されるナンバーである。直近ではあの忌々しい駄犬に付与されたと彼は記憶していたが、まさか本当に本人のわけはないだろう。彼女のハンドラーがアルバイト、それもこのような如何わしい場所で、などを許すとは到底思えなかった。
　大方、金に汚いどこぞの馬の骨が紛れ込んだのだろう。全く、呆れたものだ。
　しかし自身はこれから、その下賎な輩にこれから己のすべてを曝け出し、辱めを受けることを良しとしようというのだ。そう思うと、否が応でも身体が疼いた。果たして真に卑しい獣であるのはどちらなのだろう。
「いいでしょう。そのオプションをつけなさい」
「では、そのように手配致します」
　――数分後、ＶＩＰルームにて。
　ビビッドなネオンカラーで彩られた、様々な玩具の並ぶ棚。それらが四面を埋める部屋の中、スネイルは、レッドガン部隊を模した制服に身を包んだ屈強な男たちにとりかこまれていた。もちろん、彼自身は服など着ていない。
　身につけているものといえば、首から提げた、自分の飼い主が誰であるかを示す首輪のみだった。なんとも情けのない姿だが、欲に塗れた醜い獣に、首輪をつけてもらえるだけ上等だろう。
「ヴェスパー第二隊長殿ともあろうものが、無様だなァ」
「くっ……このような辱めにこの私が屈するとでも？」
　その言葉を聞くと、男のひとりがベイラム式精神注入棒を振り上げ、裸に剥かれ床に転がされている彼の、露になった股間を打ち据えた。
「がアッ」
「そんなこと言っても、もうしっかり硬くしてるじゃねえか。マゾ犬が」
　そのまま、今度はスネイルの肉付きの良い豊満な臀部を、こ気味良い音を立て叩く。
「こんなだらしのねえデカ尻でよく次席隊長やってられるな。各方面に失礼だよね」
「も、申し訳ございませんッ！　私の尻が巨大すぎるが故に企業様の顔に泥を塗る事態になってしまいましたッ！　深く反省しております」
「よしッ！　じゃあ誠意のケツ締めトレーニングいくぞ。目指せシェイプアップ♡」
　樹太枝太を体現した精神注入棒が、ズムッと勢いよく、土下座の姿勢から尻だけを高くあげた姿勢のスネイルの、縦に割れた尻穴へと突き挿さる。
「オラッ！　しっかりカウントしながらケツ締めろ」
「ひゃい♡　い、いちっ♡　オホッ♡　にっ♡　オホッ♡」
「突くたびイッてんじゃねえよ死ね。しかしその締まりや良し」
「お褒めに預かり光栄でございます。今後とも益々精進して参ります」
　傍から見れば『異常』と以外形容する言葉のない空間であろう。しかし、この場においては、これこそが『正常』なのである。
「準備運動はこれくらいでいいだろ。入れ、新入り」
　男のうちの一人がそう言うと、ガチャリとスタッフルームの扉が開き、部屋に新しく影が落ちる。
「がんずさーてぃーん、出撃する」
　その声を聞いた瞬間、スネイルは一切のプレイを忘れて正気に引き戻される。
　まさか、そのまさかだった。やる気のあるのかないのか分からない掛け声と共に現れた姿は、彼のよく知る独立傭兵のものだった。
「駄犬……何故このような場所に」
　貸出されたものであろうぶかぶかのコスチュームに身を包んだ彼女に、心の底からの疑問を投げ掛ける。
「お金かせぎ」
「貴方には我が社から充分な報酬を支払っているはずですが」
「全部、つかった。パーツに」
　これだからＡＣ気狂いは……ッ！　飼い主は何をしているんだ、と思うと同時に、同族である上官のニヤケ面まで脳裏に浮かび上がり、刻まれた眉間のシワが一層深くなる。
　しかし、彼にはそれよりも気がかりなことがあった。
「いや、そんなことよりも。大丈夫なのですか、コンプライアンス。彼女、未成年でしょう」
「見た目は未成年ですが、書類上は成人しているので問題ありません」
　言われて、彼は以前一度目を通したレイヴンのデータを記憶の中から探り出す。そういわれてみれば、書かれていた実年齢に驚いた覚えがあった。
「……貴方、飼い主の許可は」
「『……。お前が決めろ、６２１』だって。だから決めた」
「ならば良いです。続けましょう」
　無知で愚かなこの駄犬にこの私を満足させることが出来るのか、お手並み拝見といきましょう、と意気込みを新たにし、グロテスクな演劇へと再度、没入していく。
「エロ蹲踞、して。iw○raでしか見たことないから、本物を見てみたい」
「よしなさいそんなサイトを見るのは。そんな下品な格好、するわけが無、い……」
　そのセリフを言い終えるか終えないかのうちに、ぱん、と乾いた音が薄暗い部屋の中へと響く。スネイルの頬にくっきりと残った掌の痕が、音の正体を示していた。
「口答えするの」
　ごくり、と生唾を飲み込む音が暗い室内にこだまする。逆光で、彼からはレイヴンの表情を窺い知ることは出来なかった。しかし、コーラルに染まった瞳から放たれる視線の、射すくめるような冷たさを肌で感じるだけで十分だった。
「や、やります。やらせていただきます」
　脚を折りたたみ大股を開いた体勢になり、両手を頭の後ろで組む。股間へと垂れた、アーキバスのロゴと共に顔写真の入ったプラカードが、僅かな光を反射し煌めいている。
　数秒後、そこには巌のごとく強靭な体幹により支えられ、微動だにしないマゾ豚スタチューが聳えたっていた。
「もう勃ててる……許可してないのに。情けない」
　いつもと変わらず平坦な声ではあるが、そこには明らかに失望と落胆の色が濃く滲む。およそ第四世代とは思えない感情の豊かさだった。
「じゃ、そのまま自己紹介して」
「アーキバス傘下、ヴェスパー部隊所属、第二隊長、スネイルです」
「そこはスラスラ言うんだ……」
「企業の肩書きに恥じるところなど一切ありませんからね」
「そう……。まぁ、いいよ。あなたが誰でも……興味、ないから」
「なんですかその言い草は。少しは興味を持ちなさい。企業なのですよ？」
「肩書きなんか肉オナホで十分でしょ。ほら、しゃぶってよ」
　そう言い放つと、彼女は細く薄い胴に下穿きを繋ぎ止めている紐帯を緩め、下半身の全てをスネイルの眼前へとさらけ出す。
「だ、駄犬……獅子……い、いやその急流を遡る鯉の如き力強い雄姿はまさに龍。龍王……！」
「うるさい。はやくして。最新型なんだから出来るでしょ。出来ないの」
　既に勃ちあがりはじめているそれを、訳の分からないことを喚いているスネイルの頬へ、グリグリと押し付ける。
「やめなさいッ！　誰が旧世代型の汚いものなど……ッ！」
　これは本心からの言葉であった。だが、そうであるからこそ良いのだ。カビの生えた旧世代型の、醜悪な陰茎を最新型たる自分が慰める羽目になる。決して敗北の許されない己が格下へと無様に負けを晒すその屈辱感。本人が現れたのは想定外だったが、より興奮を煽るためのスパイスになると考えれば、むしろ僥倖であったと言えよう。
「ごちゃごちゃ言ってねえでしゃぶれつってんだよッ！」
「んぐっ」
　不慣れ故加減がわからぬのか、それとも端からその気などないのか、駄犬に突如、よく手入れのされた髪を引っ掴まれ、陰茎を口内へと容赦なく捩じ込まれる。喉奥を刺激され嘔吐感がこみ上がってくるが、そこは最新型強化人間、肉体の反射反応を意識的に制御することなど朝飯前であった。
　『吸引力の変わらないただひとつの企業、アーキバス』を体現したように吸いつくそのあいだにも、蹲踞の姿勢は崩すことがない。
「……ッ！　なかなか具合がいいじゃん」
「ほうへんへひょう」
　企業なのですから、と続ける。
「何が当然なのか全く分からないけど喉まんこ気持ちいいからまぁいいや。射精そうだから奥締めろや」
　そのまま、スネイルの事など全くお構い無しに、喉奥目掛け打ち付ける腰の速度を上げていく。それはやがて第二宇宙速度に到達。睾丸重力圏内から脱出した精液は、強すぎるバキュームにより真空状態となった口腔へと解き放たれ――天地創造。光あれ。
「あ～……企業の真空バキュームフェラやばすぎ。過去一出たかも。全部飲んだか？　口開けて見せろ」
「く……ッ」
　恥辱に塗れた表情をしながらも、旧世代型に言われるがまま、べぇと下品に舌を突き出す。
「うわザーメンくっせ♡　全部飲めたじゃん、えらいえらい。マゾ豚適格！　ケツハメおねだりする権利をあげる」
「誰が、レッドガンの旧世代型なんぞに……ッ！」
　この場にいない特定人物が想起されるが、やめておこう。
「やれるよね？　 やれよ」
「ンオッ♡」
　重い馬に鞭を入れるがごとき金的が直撃し、彼は思わず仰け反る。
　その行為と、幅の広い肩の上に重くのしかかる無言の圧を背負いながら彼は何となくフロイトのことを思い出していた。あのふにゃふにゃとして掴み所のない上官が、本気で機嫌の悪い時に醸し出す雰囲気によく似ているなと、脳のまだ冷静な箇所で分析する。
　普段からよくつるんでいるようだから似てきたのか、それともＡＣ気狂い同士、もっと根っこの所で似ているのかは判断がつかなかったし、スネイルにとってはどちらであろうが興味はなかった。彼の興味はもっぱら、旧世代型と見下す彼女より与えられる屈辱的快楽のみだ。
「駄犬……いや、龍王様。どうぞこの哀れなマゾ豚めにおちんぽお恵みください♡　準備万端調教済みマゾケツマンコ、好きに使って頂いて構いませんッ♡」
　彼は維持していた蹲踞の姿勢を崩し、自ら肉のたっぷりついた尻を左右に広げ、ぱっくりと縦に割れた肛門を衆目へと晒した。
「うわマジでやったよ。こんなケツハメ要求マゾ奴隷が次席だなんて、アーキバスも首席隊長も可哀想だね。未来を憂うわ、土下座しろ土下座」
「はい……♡　すいませんッ！　尻穴奴隷化改造済みで申し訳ありませんッ！　企業様に顔向け出来ません！」
　言いながら、額を床に擦り付けるほどに深々と頭を下げた、見事な土下座を披露する。
「よく出来ました。じゃ、挿れてあげるよ」
　土下座の教科書があるならば、間違いなく見開きを使って掲載されたであろうそれの頭を靴裏で踏み潰し、言い放つ。
「後ろから行くぞ♡　デカ尻で潰れちゃうからね」
「ま、待ちなさい！　そんないきなり……」
「もうイったの？　まだ半分も挿入ってないよ」
「ろくに解しもせず挿入するとは……野蛮極まりないですね」
「しっかりケツ穴締めてアクメしながら何言ってんの。腹立つな、全部挿れて殺すか」
「ンオッ　それやばッ♡　潰れりゅ♡　オス子宮潰されて死ぬっ！」
「男にあるのは前立腺でしょ。そのまま死ね」
　ふと、イキ狂っているマゾ豚の左薬指に嵌っている、輝く指輪が彼女の目にとまった。
「へぇ結婚してるんだ？　それなのにこんなとこでちんちん手で擦られながら一回りも下の女の子ちんちんでケツ穴ブチ抜かれてクソマゾアクメキメてるんだ」
「そ、それは……ッ」
「何？　ほんとのことでしょ。無駄にデカいだけ……あ、でも私のより小さいね。旧世代型に負けてるざこざこ子供ちんぽがよ。よし決めた、動画撮ろう。旧世代型ちんぽに負けて子種無駄撃ちしてるとこ家族に見てもらおうね♡　どんな顔するかな？　私には家族が居ないから分からないや、知りたいな。ねぇ……パ・パ♡」
　誓いの証がその薬指を彩る大きな手に、白く細い自らの手を重ね、指を絡めながらそう耳元で囁く。
「そ、それだけは……ッ」
　普段の彼女の様子からは想像もできない姿と怒涛の言葉責めであるが、これにはしっかり理由がある。
　６２１はルビコンⅢに降りたって間もなく、ウォッチポイントにて大量のコーラルに曝露された。それにより、脳の未だ秘められたる未知の領域が活性化。総てのオスを蹂躙、マゾヲスとし、遍く銀河に君臨すべく、本人も知らないところでサドメス本能が開花していたのだ。
「嫌だって言っても聞かないし、そもそも拒否権なんか無いけどね。おい、カメラ回せ」
「も、もう回しています　最初から最後まで録画しろと、閣下のご用命であるので……」
「本当？　死ねよ変態」
　蔑んで、マゾヲス棒を扱く手を先端の方へと這わせ、鈴口……つまり尿道の入口へと爪を立て、人差し指を捩じ込む。
「それやだッ♡♡♡♡♡　ぐりぐりじないれっ♡♡♡」
「ひっくい声で女の子みたいに喘いで恥ずかしくないの？　もっと出せよ！　全部聞いてもらおうね♡」
「擦れりゅ♡　ケツまんこ擦り切れりゅッ♡　まんことちんぽほじくられてイグッッ！」
「呂律回ってないぞクソ豚」
　限界まで勃起し、天を突くように反り上がった陰茎は射精の快感を求めてなお一層膨れ上がるが、物理的に栓をされていてはそれも叶わない。ただ海綿体が張り詰める痛みだけを与えられ続け、重度の被虐嗜好者である彼の心にもとうとう泣きが入る。
「辞職ッ！　辞職しましゅ！！　辞職するからッ♡　もうやめて！　やめッ♡　おほッッ♡　死ぬッッッッ♡　本当に死ぬッッ♡　イぎじぬッッ」
　賢明な読者諸君はお気づきであろうが、企業であることを何よりも誇っている彼に限って、辞職するなどは天地がひっくり返り、太陽が逆に沈むようになったとしてもありえない。これは所謂、セーフワードというものであった。本人が文字通り、死んでも言わないであろうフレーズを、予め合言葉として決めてあるのだ。
「死ねッ死ねッ死ねッそのまま死ねよッ！　 ちんぽで殺してやるッッ！　ＡＣでもちんぽでも、旧世代に勝てないまま死んでいく気分はどうだッ」
　だが、期間限定のアルバイトとして雇われた彼女には、その伝達がなされていなかった。
「じ、辞職すると言って……おほぉっ♡　こ、この店の報連相はどうなっているんだッ」
「イけっ！　オラッ！　イキ死ね！　お前の精子製造企業は今日で倒産だッ！」
「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ♡♡♡♡♡♡♡」
　絶頂と同時に尿道を塞いでいた指が抜かれ、勢いよく噴き出た白濁が床に大海をつくる。
「やっと死んだ」
　彼女も射精すものを射精し終え、力の抜けた陰茎をずるりと、絶頂の余韻でまだ蠢いている尻穴から引き抜く。スネイルはといえば、あまりの刺激からか白目を剥き、泡を吹いて気絶。そのまま床に伸びていた。
「……疲れた、帰る」
　床のまだ微振動しているそれに一瞥をくれて、一仕事を終えた６２１は、控え室へと引っ込んでいった。
　――後日、スネイル宛に彼女から『あの時のお金でパーツ買えた。ありがとう』と、新作パーツと、ピースサインを作った彼女とのツーショット納品式写真の添付されたメッセージが送られてきたという。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
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		<title>鏡像異性体（V.I＆621）</title>

		<description>支部にある奴と一緒。完全版は本に収録。…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 支部にある奴と一緒。完全版は本に収録。


ルビコンⅢにおける資源争奪戦争は、遂に佳境を迎える。ウォッチポイント・アルファにて甚大な損害を被ったベイラム陣営は既に撤退。戦況はアーキバスの有利へと大きく傾いていた。
　勢いに乗った彼らはそのまま、コーラルを吸い上げるべくバスキュラープラントを建造。しかし、王手を目前にしてシュナイダーが離反。彼らと手を組んだルビコン解放戦線は、星外企業に対し一転攻勢へと打って出た。
　果たして誰が勝者となるのか。舞台は終幕へと向かって混迷を極めていく。
　　　　　　　　　＊
　この惑星に渦巻くあらゆる思惑を、すべて、惑星ごと、灰燼に帰せんと猟犬が疾駆する。
「お前がレイヴンか……」
　蒼穹から、それよりも濃い蒼色をした機体が、重力などまるで存在しないかのように軽やかに舞い降り、猟犬の行く手を阻む。
　不意に名を呼ばれ、猟犬は赤く輝くカメラアイを彼のほうへ向けた。見つめ返すは強烈な光を放つネオングリーンの瞳。緑と赤の視線が交差し、戦場には似つかわしくない静謐が時を凍らせる。
　ヴェスパー部隊の首席隊長。アーキバスと仕事をしていた時分にも会ったことはなかったが、噂にだけは聞いていた。彼もこちらのことは把握しているようだ。猟犬の、操縦桿を握る手に無意識に力がこもる。
　いざ、参らん、と一歩踏み出したその瞬間、ロックスミスが、目の前を飛ぶ羽虫を追い払うかのように、軽く腕を振るう。すると、ＲａＤ所属の僚機が――人工知能である彼にとっては肉体そのものである機体が――爆炎を噴き上げ、動作を停止した。
「チャティ……！」
　我が子を失ったカーラの悲痛な叫びが猟犬の耳を劈く。
　心臓が熱い。喉が渇く。呼吸が乱れ、インターフェースの端で脈拍数が増加していく。一方、思考の底で冷静な自分が囁く。おまえも散々同じことをしてきたではないか。
　猟犬はフットペダルを踏み込み、機体の速度をあげた。加速の要請に応えるジェネレータの轟音が余計な声を塗り潰す。戦場に思考は不要だ。殺らなければ、殺られる。
　景色が両側に分かれ、彼我の距離がぐんぐん縮まっていく。相対する彼は微動だにせず、見たものを解体し、その中身をすべて舐めとるような視線を、不気味に輝く緑の眼を通して、鋼鉄に隔てられた向こう側から不躾に投げ付けている。
　――一騎打ちの火蓋を切ったのはロックスミスだった。浮遊砲台が射出され、ひとつひとつが独立した意思を持っているかのごとく自在に飛び回る。それらとアサルトライフルの織りなす弾幕が、ローダー４の姿勢制御システムを着実に削っていく。
　避けるべきものは避け、問題のないものはそのまま受けながら、猟犬も相手を観察する。ヴェスパー部隊首席隊長の機体構成は、武装だけを見ればバランスがとれていた。不可解なのはそのメインフレームだ。彼の地位ともなれば、アーキバス製の、より洗練された最新のものをいくらでも使えるだろう。
　彼の機体は、子供が組んだように猟犬にはうつった。これがいい、これで遊びたい、これじゃないと嫌だ、と駄々をこねる子供。それで今の位置にいるのだから、実力は間違いなく本物だろう。
　ローダー４の戦闘補助システムが敵機を照準に捉えた。猟犬は操縦桿のトリガーを引く。ミサイル弾頭の黒い群れが解き放たれ、白い尾を振りながら獲物をめがけて飛んでいく。本体は更に加速。ミサイル群を後ろに残し、急速に対象と距離を縮める。
　対するロックスミスは剣を構え、迎撃姿勢。電磁波の刃が次第に輝きを増していき、一閃。一文字に宙を裂く。
「……そういう動きもあるのか。面白いな」
　その刀身は猟犬を捉えてはいなかった。独立傭兵は間合いに入る直前で急制動。切っ先は機体の鼻っ面を掠めるのみに留まった。
　並の傭兵ならば、間合いを見誤り刃の餌食になるか、詰める踏ん切りがつかず、ドローンとライフルに嬲られたところを逆に詰められトドメをさされるかだろう。そのどちらでもない、半ば曲芸に近い芸当をやってのけた猟犬に対する、素直な賞賛の言葉だった。
　６２１もまた、無茶な動きをした負荷で霞む視界のなか、彼の動きを綺麗だと思った。鮮烈で、繊細で、大胆で、残酷で、美しい。今まで他の誰にも、同じように感じたことはない。彼を、もっと見ていたい。
　到底叶わぬ願いだった。殺らなければ、殺られる。それが嫌なら、尻尾を巻いて逃げ出すしかない。シンプルな理屈。戦場に生きる者である以上、誰であってもこの鎖のように絡みつく掟からは逃れられない。
　刃を振るった反動で硬直する彼の機体に向けて、猟犬の握るショットガンが火を噴く。さらに、先ほど放たれたミサイル群が黒い雨となって敵機に降り注ぎ、追い打ちをかける。ＡＣＳの限界を超える衝撃に、耐えきれずロックスミスが姿勢を崩す。すかさず、アサルトアーマーを起動。パルス爆発を間髪いれずにたたき込む。
　――蒼い機体が、浮力を失い地に墜ちる。
　途切れ途切れの通信から、動け、と愛機に呼びかける声が響く。もう動かないのか、と独立傭兵は少々残念に思った。もっと見ていたかった。もし、違う出会い方をしていたら、違う結末だっただろうか。
　インターフェースに映る猟犬のバイタル値は、正常に戻っていた。使命を遂行するのに余計な感傷は必要ない。ここで、確実に、終わらせる。
　ショットガンより持替えられた、パイルバンカーを握る腕が躊躇いなく、動かぬ機体に振り下ろされる。陽光を受けて白銀に輝く先端が、群青の装甲を穿ち、中へと突き進んで行く。
　冷たい切っ先が、狭い鳥籠の中で無防備に曝け出された生肉に触れ、筋繊維、骨、内蔵、神経、血管――人間を構成するありとあらゆる部品――を貫き最奥へと達する。
　流れ出ていく体温、肺から絞り出される僅かな吐息……ひとつの生命が潰える感触。第四世代の焼けた脳へ、すべてが鮮烈に、神経接続を通して突き刺さった。
　もう、二度と会うことはないだろう……さようなら。
　　　　　　　　　＊
　時が止まって、この今が、この瞬間が、永遠になればよいのにと、こんなにも望んだことはなかった。まだ足りない。もっとやりたい。愛機に動けと念じる。しかし、仮に機体が万全であっても、最も重要なパーツが指の一本も動かせないのであれば、その祈りが届くことはない。
　彼は部隊を取り仕切り、このルビコンにおいても采配を振るっている男に「遊ぶな」と小言を頂戴するのが常であった。何度も見たそのしかめ面は、たとえ本人がその場にいなくとも鮮明に思い描ける。
　「遊んでいるわけじゃない。ただ、楽しんでいるだけだ」と、作戦成功率をちらつかせながらやり返せば、目の前の神経質な男が眉間の渓谷をいっそう深くしつつ、しかし返す言葉も無く黙るしかない姿は、フロイトにとってそれなりに愉快なものだった。
　今際の際に浮かぶものが、家族でもかつての恋人の顔でもなく、同僚の顔とは。むしろ仕事熱心だと褒められたいくらいだ。
　そう、仕事。仕事だ。いつもの実験。真人間でありながら強化人間をも凌ぐ性能を発揮する彼に代表される、人間という個々のばらつきが大きいパーツを排し、常に安定したパフォーマンスを高水準で発揮できる兵器を作り出すための、実験。
　その目的は、責任者である第二隊長の目的と言い換えてもいい、人間を超える、死をも恐れない機械の戦士を作り出すことだった。しかし、彼の努力もむなしく、実験はこれといった成果を今のところ上げられていない。
　『性能試験』はただの人間が連戦連勝。中身にかかる負荷を考慮しない機動が可能なぶん有利であるはずなのに何が足りないのか。スネイルはその鍵を未だ見つけられずにいた。
　そのプロジェクトに彼が熱をあげていることが、フロイトには少々面白くなかった。おれがいるのに。おれでいいじゃないか。確かに死ぬのはいやだ、けれど、おれが怖がったことが一度でもあったか、奴に問い質してやりたい。
　つまらない。退屈だ。実験も、降ってくる任務も、この惑星も……。
　全く代わり映えのしない日々。愛してやまないロックスミスと共に空を飛んでも、景色が褪せてみえる。以前はこうではなかったはずなのに。
　目眩のする現実は、彼を自己嫌悪へと陥れるのに十分だった。
　彼にとってＡＣを駆るのは楽しみだった。だから続けてきた。ただ、楽しかったから……。理由なんて、それで十分だった。
　なのに、いつの間にか、誰かが、勝手に、彼に重荷を背負わすことが増えていた。
　そんなもの気にしなければいい、と軽々しく人は言う。その通りだ。しかし、目の前を小蠅にうるさく飛び回られて全く意に介さないというのは、人間である限り無理な話だろう。
　嗚呼、でも、あの瞬間。猟犬と剣を交えた瞬間。燻る火種が燃え上がり、炎が全身を灼き尽くした。
　せめてもう一度、あれと同じ高さを翔べるのならば、もう一度、再び訪れることのないあの瞬間を味わえるのならば、何を差し出しても構わない。悪魔だなんだに魂だってくれてやってもいい。
　無論、そんなものはいやしない。
　彼は無意識にため息をつく。肺から呼気が漏れる代わりに血液が泡立ち、強化手術を施していない彼専用に改造の施されたパイロットスーツをさらに汚す。
　血に塞がれて右目は見えない。無事な方の視界も、像が結べなくなってきている。世界が遠のいて行く。
　僅かに残された力を振り絞って、彼は、ロックスミスの心臓部にあけられた穴から天を仰いだ。地上から見るより宙が近く、紺色の中心から漏れ出す光が眩い。
　その光、すべてを見下ろす恒星に向かって、鳥が一羽、翼を広げ飛び立っていく。
　この高度に生物が居るはずもない。しかし、フロイトには、その姿がはっきりと見えていた。
　　　　　　　　　＊
「ヴェスパー・ワン、機体反応消失――」
　地上での掃討を終えて、自らもザイレムに乗り込み後方で作戦指揮を執っていたスネイルには、今しがた自分の耳に飛び込んできた報告が理解できなかった、したくなかった。
　些事ではなかったのか。なかったとしてもフロイトさえ居れば十分だったはずでは。まさかあの忌々しい駄犬ごときにあの男が遅れをとったとでもいうのか。
　そんな、バカな。有り得ない。有り得ていいはずがない。しかし、何度確認をしてもモニタ上には機体反応消失の文字が点滅している。視覚デバイスが、不具合を告げるビープ音を鳴らしてくれたらよいのに。
　呆気にとられている間にも、最新型強化人間の幾重にも強化を重ねた電脳は休むことなく駆動し、思考の欠片がいくつも瞬いては消えていく。
　とにかく、なにか指示を出さなくては。混乱しきっている現場をまとめ上げられるのは自分しかいないのだから。
「救護班！　 現場へ急行しなさい。私も共に向かいます」
「はっ！」
　言うが早いが、自らもオープンフェイスに乗り込みブーストを吹かす。蝸牛のごとく鈍重な機体が、それの最高速度を以て爆心地へと飛ぶ。
　恒星間入植船の上、超高高度。重い雲に覆われた地上とは違う、どこまでも高く蒼い空。眼下に広がる雲海。青と白のコントラスト。ここはいつも晴れている。
　第二隊長にはのんびりと景色を見ている暇などない。ここに来る以前から、ずっとそうだった。無茶ばかり要求してくる現場を知らない上層部に、問題児だらけの部隊。トップがあの有様である以上、現場で指揮を執る役目は必然、彼に回ってくる。
　第一隊長に関しては、指揮にしろ日頃の事務仕事にしろ、遂行能力がないというわけではない。できるくせにやらないのだ。日頃から進言しても、あろうことか「こういうことは、おまえのほうがうまくやれる」などと囁き籠絡を試みてくる。それで気を良くし、毎度引き受けてしまう自分が、彼は情けなかった。
　なぜ今、こんなくだらないことが浮かんでくるのだろう。まさか、懐かしんでいるとでも？
　周囲の景色が流れるように後方へ去る。随伴のＭＴからすれば十分速いが、それでも焦燥感に焼かれる彼にとっては遅すぎるほどだ。速く、もっと速く。既に自身の性能を限界まで発揮している内燃機関と推進器が、さらなる加速の要請に悲鳴をあげる。
　日頃より自らを企業と公言して憚らない彼にふさわしい、全身をアーキバス及び同社先進開発局製の武装で誇らしげに固めた機体。それをこれほど鈍間に感じる日が来るとは、夢にも思っていなかっただろう。
　時の針が進む度、彼の額に滲む汗の玉が増えていく。
　あの男を失うわけにはいかない。ＡＣの操縦に最適化された強化人間や人工知能をも凌ぐ人間。外れ値。
　ブラックボックスの中身を解明するまで、死なれては……脳に機能を停止してもらっては、困るのだ。有機コンピュータさえ確保してしまえば、残りの有機物――肉や骨など――は必要ない。代わりの身体を拵えてやればこと足りる。
　生体パーツとして加工された人体や、人工知能を用いた機体は、誰もしくは何を素材に使おうと、安定性と引き換えにどれも似たような挙動になってしまう。それでは、ある程度経験を積んだ有人機体には歯も立たない。大量投入を前提とした物量作戦なら使いでもあろうが、それは第二隊長が目指すところではなかった。
　当然、首席隊長を使っても同じような結果になるだろうことはデータが示している。それでも、あの男なら、フロイトなら、不可能を可能にする鍵さえも握っているはずだ。そうでなくてはならないし、そう信じさせるに足る何かが彼には備わっていた。
　永劫とも思えるほどの時間がすぎ、やっとの思いで消失反応の検出された現場に辿り着く。彼は、報告を聞いてから今までの一瞬で、十年は老けたような心持ちがしていた。
　青い空の下、第一隊長の愛機、ロックスミスが、静かに佇んでいる。
　コアのど真ん中に空いた大穴を見れば、中身がどのような状態であるかは明らかだった。スキャンをかけるまでもない。第二隊長は自らの機体から降りると、黒い煙をもうもうとあげている蒼い機体に駆け寄て、ハッチをこじ開けにかかった。
　ぴたりと閉じていた隙間が徐々に開かれてゆくごとに、噎せ返るような鉄の臭いに加えて、僅かに甘い匂い――死にゆくもの独特の香り――が、彼の常人より遙かに優れた嗅覚を刺激する。
　扉が完全に開かれる。狭い操縦席と、その上に力なく横たわる身体。その中央に空いた、向こう側が見通せるほどの穴から血液の川が幾筋も止めどなく流れ出て、下方で合流し赤い海を成している。
　……血の色が変わり始めている。遅かったか。それでも、やらないわけにはいかない。
「……救護班。脳の保存と、遺体の回収を」
　了解しました、という言葉と共に作業が開始され、先程までフロイトだったものを運び出す作業が、粛々と開始される。筋繊維の千切れる音と共に、上半身が引き摺りだされ、残された下半身がずるりと、コクピットの狭い床に崩れ落ちる。
　赤黒い血、白い骨片、健康的な色をした内臓、エトセトラ。彼を構成していた諸々が零れ落ちて、ただ立ち尽くすスネイルの足元を汚し、惑星間入植船――生命を運ぶ船――の表面をいずこかへと流れ、散っていく。
　彼は、もう何も映すことの無い双眸を閉じてやり、認識票の片割れを回収する。
　名前、識別番号、そして血液型の刻まれた、ステンレスの小さな板。本来なら宗教も刻まれているはずだが、そこは空欄だった。
　上官の胸元で揺れるそれに、そんな時代遅れのもの必要ないでしょうと言えば、好きでつけているんだからいいんだと返される。何度も繰り返した、もう二度とすることのない、決まりきったやりとり。
　いつものように、人の顔を見るなり減らず口を叩いてくれたなら、どれだけよかっただろう。何故、こんな最期を迎えても笑っているのか、その眼に何を映していたのか、結局、この男のことを理解できたようで、何一つできないまま別れが来てしまった。
　彼は、べっとりと血に塗れた銀の板を、潰してしまわぬよう繊細に、失くさぬように力強く、握りしめる。
　そして、散乱した、意味の無い有機物を踏みつけることのないよう注意を払いながら、彼は物言わぬ鉄の塊を後にしようとして、ふと空を見上げた。
　成層圏の紺碧の空に、星系を照らす恒星だけが煌々と輝いており、星は見えない。
　何を当たり前のことを、と彼は我に返る。よほど動転しているのだろう。昼間に、星が見えるはずもないのに。
　　　　　　　　　＊
　さきの交戦よりしばらく後、独立傭兵レイヴンはオーバーシアーの要請により、ザイレムに僅かばかり残った企業勢力の掃討作戦に従事していた。
　企業の擁する最高戦力を以てしても止めることの叶わなかった猟犬にとって、それは狩りというよりも一方的な殺戮に近かった。傭兵が操縦桿を握る指に力をこめる度、新たな死が積み重なっていく。
　あらかた片付け終え、帰投準備を始める猟犬の眼前に、灼けた茜色をたたえる空から、見覚えのある青い機体が墜ちてくる。
　――敵か。
　すかさずスキャンをかけ機体データを取得。表示された機体名に、猟犬は目を疑った。
　確かに息の根を止めたはずだ。まさか、仕留め損ねたのか。それともアーキバスは、人体実験の果てに、死者の蘇生すら可能にしたのだろうか。再教育センターにおける自らと主人に対する仕打ちを思い返し、猟犬は顔をしかめる。
『……レイヴン、そこにいるのか』
　開かれた通信回線より、聞き覚えのある声がノイズ混じりに響く。猟犬は、後方支援のカーラにデータ分析を要請する。
　やや間をおいて、返答があった。該当データ一件、ヴェスパー・ワン。彼女の声は驚愕に震えていた。
『また、やろう。あの時の続きから……』
　声の主が、戦闘モードを起動。猟犬に、疑問を抱く暇はない。敵機が得物を構え、ドローン展開。妖精の群れが虚空に光の軌跡を描きながら、不可解な事象に未だ混乱している猟犬へと迫る。
　応えて、傭兵は飛び回るそれらを振り切るため、床につくほどフットペダルを踏み込む。ジェネレータが吼える。答え合わせは終わったあとでも間に合う。接敵、戦闘開始。
　彼の操る群青の機体は、何ひとつ変わっていなかった。アーキバス製とベイラム製の入り交じった構成のメインフレームも、すべてがあのときのままだ。
　しかし、直感が告げる、何かが決定的に違う。まるで鏡像のような、似て非なるものを相手にしている感覚。
　もしや、鋼鉄の鎧、その中身は空ではないか。傭兵は背に薄ら寒いものが走るのを感じた。そうだとするならば、全ての事象に説明がつく。以前とはうってかわって単調で精細を欠く動きにも、黄泉帰にも、合点が行く。
「ビジター……。あの機体、生体反応がない」
　やはり、そうか。身体が、なんだかひどく重たくなったような気がする。哀しい。そう、哀しいという言葉が最も適切だと、独立傭兵は思った。例えようのない、そもそも例える言葉の持ち合わせが少ないのだが、それでも例えるならば、胸からあふれ出した憂鬱が操縦席を満たして、哀しみで窒息してしまいそうだった。
　創造主は、あの嫌味な第二隊長は、ヴェスパー・ワンの、人間の、フロイトの、生まれ変わった姿を見て、満足しているだろうか。この出来だと、否だろう。記憶も、機能も、すべて寸分違わず再現したはずなのに何故と、今頃頭を抱えているに違いない。その姿を想像して、猟犬は少々気が晴れた。
　何はともあれ、まるっきり様子の変わってしまった彼との戦闘は、長引かせるだけ時間の無駄だろうと、猟犬は判断する。もうあのとき感じた鮮やかさも美しさも、どこにも見当たらない。
　無人機の動きは、どれもそこまで違ったものではない。ある程度経験を積んだものならば、戦闘中に行動パターンを割り出すなど造作もないことだ。
　解析したパターンを元に、背を屈め獲物に狙いをつける肉食獣のように、一撃必殺の機会を伺う。
　弾幕が止み、機体の動きが一瞬停止したところを狙い、遠隔火力を叩きこみつつ急接近。推力の乗った蹴りを放ち、ＡＣＳの負荷を限界へと持ち込む。同時に、アサルトアーマーを起動。そのままリペアの隙をあたえず心臓部をめがけ杭を振り下ろし、彼を再び死出の旅へと誘う。
『レイヴン……お前におれはどう映っている』
　呼吸も声帯の振動も伴わない、不自然に滑らかな音声が問いかける。
『何も見えない、何も感じられないんだ。透明だ、何もかも……』
　猟犬は、正真正銘の機械であった友人のことを振り返る。彼ですら、死ぬのは一度きりだった。
　対して、人間だった彼は此度の戦闘で破壊されても、戦闘データを引き継いで、シリコンの薄片上にまた生を受け、そして死ぬ。不要と判断され、消去されるまでそれを繰り返す。
　もし、あのとき、トドメを刺さずに放っておいたら、彼は人間のままでいられただろうか。……起こってしまったことは変えられない。栓のない話だ。
　突き刺さった杭から、腕を伝って、脳神経へ。神経接続のもたらすフィードバックは、無だ。以前のような熱も、肉の感触もない。
　そこには、冷たい鉄塊だけが、ただ静かに横たわっていた。 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2026-01-18T17:05:49+09:00</dc:date>
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		<title>フロ夢</title>

		<description>解放ルート後、死ネタ、万物捏造

雲間…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 解放ルート後、死ネタ、万物捏造

雲間から差し込む月光と、静かに舞う雪が印象的な夜だった。周囲に響く人々のざわめきと、人の輪の中心に設えられた大きな杭。それの足元には薪がうず高く積まれている。やがて、一人の男がその両脇を、武装した戦線の闘士に固められて連れられてくる。そう、自分はこれを観るためにここにきたのだ。解放戦線による公開処刑――星外企業エースパイロットの。
　戦線の掲げる思想にも革命にも、特段入れ込んではいなかった。ただ自分の生活が立行けばそれで十分だった。その点星外企業にはだいぶ美味しい思いをさせてもらった。高圧的な態度に目を瞑れば、奴らは原住民と比べて金払いがよかったし、金さえあれば取引だってできた。それが無くなるとなると、今後の方針を考えなくてはならない。解放戦線め、ずいぶんと余計なことをしてくれたものだ。理想で腹は膨れやしないのに。
　そんな自分がなぜこのプロパガンダを観に来たのか。単純な話で、興味があったからだ。企業所属のエースパイロット、エリート中のエリート。一生お目にかかることのない、雲の上の存在。それが地上に引き摺り降ろされるというのだ。この機会を逃す手はないだろう。どんな顔をしているのか、男なのか女なのか、そもそも人間なのか。賤しい好奇心が湧き上がるのを抑えられず、ここに来た。集まっている他の野次馬も似たようなものだろう。
　そして、彼を杭に縛り付け準備が整うと、戦線の人間が高らかに罪状を読み上げ始める。ひとつも頭に入ってこないが、どうでもいい。どうせでっち上げだろうし、それよりも眼の前の男を上から下まで観察するのに忙しかった。強化人間部隊のトップだと聞いた覚えがあるが、彼はどこから見ても何の変哲もない普通の人間のようだった。捕虜生活が祟ったのだろうか？　肩にかかるほど長い、僅かな灰を帯びた金の髪はやや傷んでいるように見受けられた。
　瞬間、彼と目が合った。射抜くような黄金の瞳は、死に瀕した人間とは到底思えない静けさを湛えていた。なんだか急に自分のことが恥ずかしくなって、堪らず視線を逸らす。
　宣告が終わる。人々は当惑した様子で互いに囁きあっている。やがて、誰かが礫こいしを投げた。それは弧を描いて飛び、拘束されている彼の額に小さな疵をつくった。そこから血が一筋、眦から頬、そして顎を滴り落ちて、雪原を赤く染める。それが呼び水になったのか、群れの主を失った羊のようにおろおろしていた群衆がわっと一斉に罵詈雑言を捲し立てながら礫を投げる。ほとんどは見当はずれな方向へすっ飛んで行ったが、いくつかは命中して彼の身体に痕を残した。自分は、渦中にあってなお真っ直ぐ前を向き、笑みを浮かべている彼の姿を目の当たりにすると、何もする気になれなかった。
　そして火が焚べられ、冷たい夜空を煌々と照らし燃え上がる。彼の周囲だけ、積もった雪が溶けていく。火によって陰の一層濃くなった綺麗な顔、焔を映し赫く眸。すべてが炎に呑み込まれていく。自分はまるで魔に魅入られたかのように、最後の火種が燃え尽きるその瞬間まで、彼から視線を逸らすことが叶わずにいた。
　
　解放戦線による見世物が終わり、既に興味を失った人々の波が引いていく。対照的に、自分は彼に歩み寄って、変わり果てた亡骸を月光のなか恭しく横たえ、そっと唇を重ねる。これが今生でただ一度きりの口付けだ。
　やがて雪が全てを覆い隠し、今日のことは人々から忘れ去られていくだろう。それでも自分は、灰になってしまった彼の面影を追い求めながら生きていく。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2024-09-14T19:23:47+09:00</dc:date>
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		<title>イグ６　私の色、彼の色</title>

		<description>いつものようにウォルターから任されたミ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ いつものようにウォルターから任されたミッションに向かって、いつものように終わらせて、いつものように帰投……するはずだった。

用事を済ませた後、たまたまあのレッドガンのG5……イグアスと鉢合わせて、喧嘩になった。

その後のことは、よく覚えていない。
レイヴン、というエアの声で目が覚めると、基地のわたしのベッドで横になっていた。

―――――
クソッタレ。イラつくぜ。

クソムカつく野良犬野郎にようやく吠え面かかせてやったと思ったらまさか、あんな、ガキみてえな女だったなんて。

いい気分だったのに、ツラ拝んでやろうとコクピットを開けて、眠ってるみたいに気絶してるコイツを見た瞬間、全部台無しになっちまった。

腕は掴んだらそのまま折れちまいそうなくらい細いし、身体は戦闘の衝撃でどうにかなってねえのが不思議なくらい薄いし、脚は棒切れみてえだし、オマケにどこもかしこも傷痕と包帯だらけで。
こんなもんは散々見てきたはずなのに見てらんなくて、気づいたら上着を被せてヘッドブリンガーに押し込み、飼い主の所へ向かっていた。

基地に着いて、飼い主のジジィが見えた瞬間、掴みかかっていた。

「ジジィ！テメェ……ッ！どうしてあんなガキを……ッ！」
それ以上言葉が出なかった。どうしてこんなにイラつくのか自分でも分からなかった。
「……運んで、手当してやれ」
「……クソッ」

言われたとおりにするのは癪だったが、かといって放っておくわけにもいかず、重さのないに等しい身体を抱えてベッドに横たえてやる。
幸い、外傷や出血はなかった。頭でも打ってトンでんだろう。

せっかく来たからには弱みの一つでも握ってやろうと思い、部屋を見渡し唖然とする。
一面真っ白。ろくな家具も窓もない。ウチの隊舎のクソ狭い部屋だってもうちょっとまともだ。
あるとすれば、ベッドの横に停めてある車椅子くらいのものだった。

野良犬野郎、ろくに歩けもしなかったのか。
そんなヤツに今まで、俺は……。
むしゃくしゃして、部屋を飛び出す。しばらく外に出て戻ってくる頃には目が覚めてるだろう。

―――――

《よかった、目が覚めたのですね。》
「目が覚めたか、621。」

「……？」

いまいち状況が飲み込めず、辺りを見回す。間違いなくわたしの部屋だ。ある一点を除いては。

何も置いていなかったはずのサイドテーブルの上にいつの間にか、小さな赤い花がグラスに生けられている。

「G5が持ってきたものだ。気に入ったのなら、後で保存が効くようにしてやろう。」

じっと見つめていると、ウォルターがそう声をかけてきた。
首を縦に動かして(ようやくこの動作にも慣れてきた)彼の言葉に返事をする。

赤、赤色。
この部屋にある唯一の色彩。そして、私の世界にあるたった一つの色。
血。
コーラル。
エア。
わたしの瞳。

「……んだよ野良犬。目ェ覚めたのかよ。」

そして、彼の髪。

《レイヴン、ノックもなしに他人の部屋に入るのは失礼な行為にあたると聞いたのですが……》

「耳鳴りがうるせぇな……おい、わざわざ運んでやったんだ。感謝しろよ、野良犬」
「……あ、りが、と。……グア……ス」
「……ッ！お前、喋れたのかよ……」
最近ようやく声を出す機能が戻ってきた、と伝えると苦虫を噛み潰したような顔をして、悪態をつきながら出ていってしまった。
よっぽどわたしのことが気に食わないのだろう。顔を合わせると何かと突っかかってくる。

でも、わたしは彼のことが気に入っている。
いつかこの気持ちをわたしの声に乗せて伝えられたらいいのに。
出ていく彼の背中を見送りながら、そう思った。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2024-05-23T17:55:08+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://wisteria.novel.wox.cc/entry26.html">
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		<title>6</title>

		<description>アーキバスよりの依頼を受けた数日後、無…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ アーキバスよりの依頼を受けた数日後、無事カタをつけて報告のため拠点に戻ると、なにやらざわついていた。
「ペイター……お祭りでもやるの」
ちょうどデブリーフィングも終わったので、独立傭兵との窓口である彼にそう尋ねる。
「あぁ、ベイラム経済圏から伝わってきた立春のお祭りをやるみたいですよ。私たちのところでは本来聖燭祭やインボルクのほうが一般的なのですが、今年は趣向を変えるみたいですね。なんでも、悪魔に豆を投げつけるとか」
「……よく、わからない」
「まぁそうでしょうね。私も説明を受けましたがよくわからない祭りでした。そういえば、首席隊長殿が探していましたよ」
「ん、連絡してみる」
シャワールームを借りて、着替えて、携帯端末からメッセージを飛ばすと、すぐに返信が来た。
『俺の部屋に来てくれ』
了解、とだけ返して早速、ランデブーポイントへと向かった。勝手に扉を開けて、中へはいる。もう幾度も訪れているから手馴れたものだ。
「お、来たか。これ、見てくれ」
そう言って差し出してきたのはエアガンでも改造したかのような機械であった。
「なにこれ」
「豆マシンガン」
「まめ……？」
「聞いてないのか？ 祭りの話」
「悪魔に豆をぶつけるやつ？」
「そうだ。これで豆を発射する。鬼も裸足で逃げ出すだろうな」
「鬼は誰がやるの」
「スネイルとオキーフ。スネイルの奴をフォーカスするぞ。倒す、そしてパーツ申請書を通す」
お前の分もあるぞ、と一丁手渡される。スネイル退治を手伝えということだろう。
「そういえば、豆食べたか」
「食べてない。どうして？」
「歳の数だけ食べるものだそうだ。ほら、いくつだ」
いくつだろう。何せ冷凍されていた身だ。書類上の年齢と、肉体年齢どちらを適用するべきなのだろうか。
「数が大きい方にしておけ」
大は小を兼ねると言うだろ、と付け加える。一理あるかもしれない。
「うーん……三十個くらい。多分」
「歳上だったんだな」
半分近く寝ていた上、記憶も何もかも失っているのだから歳上と言われてもしっくりこない。彼の方が、あらゆる事の経験が豊富だろう。
いち、に、と心の中で数を数えながら豆を口の中に放り込んで、咀嚼した。案外いける味がする。こんなに小さな粒でもしっかり味がするのだからおもしろい。
「食べたな。鬼退治のメンバーを後二人、探しに行くぞ」
鬼退治というのは、コードネーム:モモタロウ、イヌ、サル、キジの四人一組（スクワッド）でやるのが通例らしい。
「あの狼はお前が声をかけたら間違いなく来る。残りは……八番がいいだろうな。スネイルをやると言ったら乗ってくるだろう」
なかなかに奇妙な組み合わせだ。しかし、実際パーティーにスカウトできそうなメンバーといったら彼らになるだろう。
早速、貰った武器を装備して勧誘に出掛けることにした。まずはラスティからだ。おそらく自室にいるだろう。
「ラスティ、いる？」
「……ッ。何か用かな、戦友。君の方から来てくれるなんて、今日はとびきりいい日だな」
フロイトの顔を見て一瞬表情が険しくなったが、すぐにいつもの笑顔をこちらに向けてくる。
「鬼退治やる。スネイル倒す。手伝って」
「君もあの祭りに参加するのか。そういうことならばこのラスティ、喜んで手伝わせていただこう」
ラスティが仲間になった。次はペイターだ。
何処にいるのか皆目見当もつかないので、メッセージで連絡をしてみる。
『ペイター、鬼退治に協力してほしい』
『あの祭りですか。私は遠慮させていただきます』
『スネイル倒す。ラスティとフロイトもいる』
『是非ともやらせていただきます』
彼とは現地で落ち合う手筈となった。これで四人揃った。フロイト曰く、モモタロウは私、イヌはラスティ、サルはペイター、そして彼がキジらしい。準備は万端だ。会場に乗り込むとしよう。

「やぁ、レイヴンも来たんだねぇ。楽しんでいくといいよ」
拠点の外に今日のため作られた会場につくと、ホーキンスが声をかけてきた。
「うん。鬼退治、がんばる」
「後ろのお兄さん達は……」
「パーティーメンバー」
「気合いが入っているねぇ」
「レイヴン、来い。作戦会議だ」
また、とホーキンスに別れを告げて、私を呼ぶフロイトの方へと駆け寄る。
「俺たちは十字砲火という陣形で戦う」
「チーム分けはどうするんだ」
「グーパーでいいだろ」
どうやらじゃんけんのグーとパーのうち好きな方を出せばいいらしい。
「いいか？ いくぞ、グッパージャス！」
結果、モモタロウこと私とフロイト、ラスティとペイターの組み合わせとなった。
開始の合図が会場に響く。
いよいよ節分レイドの開幕だ。
作戦通り射線が十字になるように二手に別れ、トリガーを引く。弾倉に込められた豆が銃口から標的へと絶え間なく発射される。
「くたばってもらおうッ」「昇進ッ！」
ラスティチームはかなり気合いが入っているようだ。
流石のスネイルも、四人に撃たれたら一溜りもないだろう。
……全然そのようなことは無かった。ルビコンの雪山全てを震わすほど吼えた後、ヘリアンサス型もかくやという勢いでラスティとペイターに突進する。
二人は速度と体重の乗った渾身のラリアットをもろに食らい、吹き飛んでいき見えなくなってしまった。
まさか一撃で半壊させられてしまうとは。
くるりとこちらに向き直ったスネイルが、次の獲物は私たちだと言わんばかりに弾幕をものともせずズンズンと近づいてくる。狩る側だと思い込んでいたが、どうやら狩られる側だったようだ。
あっという間にフロイトが脚だけを残して雪に頭から埋まる。似たような構図の映画ポスターを見た事あるな……などと場違いなことを考えていると、目の前に迫ったスネイルからデコピンをお見舞された。
脳が揺れて、視界が回って大の字に倒れ込む。
空が、眩しい。
「文字通りの豆鉄砲でこのスネイルを倒せるとでも思いましたか」
何も返す言葉がない。5分ともたないとは思いもしなかった。
部隊全滅。ゲームオーバー。私たちの冒険はここで終わってしまった――。

医療班に引き上げられ、手当が終わり部屋に戻る頃にはすっかり日が暮れていた。
遅いので、今日はここに泊まっていくことにする。
服が汚れてしまったので、私にはサイズの大きい、フロイトのTシャツを借りて彼の部屋で特にすることも無く転がっていた。
すると、突然抱き上げられて、舌を彼のそれで絡め取られる。息苦しさと驚きから胸を叩くが全く意に介さない。
唇と舌の柔らかさが気に入ったとかで、時折そういう気分になると突然こうしてくる。
舌をちゅう、と吸われる度に、舌先から脳の奥までピリピリとした感触が走る。たまらず、ぎゅっと彼のシャツを握りしめる……瞬間、部屋の扉が大きな音を立てて開いた。
「なんだ……？ お前か、なんでもう全裸なんだよ。レイヴン、見るな」
「鬼ですからね」
「鬼だってパンツは履いているだろ」
「イージーモードです。最初から弱点であるコアが露出した状態で戦闘が始まります。もちろんその分報酬は少ないですが」
「なんなんだよ」
「そちらこそなんですか。昼間の無様は。あのような責めでは全くもって生温いッ！ というわけで、再戦のチャンスを差し上げましょう」
「いや必要ない」
「今なら特効武器配布中です」
その言葉と共に、金棒めいたおそらく尻に入れるための棒が床にごとりと音をたて放り出される。
「今どき特効武器とか哺乳類登場以前のソシャゲか？ いらないって言ってるだろ。マゾの押し売りはやめろ」
「もうやだ……ねむい……」
「寝たいなら私を倒してからにしなさい」
観念してレイドボスを討伐するしかないようだ。同じように諦めたらしいフロイトが深いため息をつきながら、例の改造マシンガンと暫定金棒を拾い上げ怠そうに立ち上がる。
そのまま弱点目掛けて乱射ながら突撃し、多少効いたのか前屈みになったところで素早く後ろに回って強化肛門に例の棒を突き挿す。
「ん"お"ッッッ♡♡ まだまだ、この程度では倒れませんよッ」
「早く倒れてくれ……福は……内ッ！」
聞きなれない掛け声と共に、先程より更に深く、金棒が体内を抉るように蹴り挿れられていく。
「ん"ほ"ぉぉぉぉぉ♡♡ 効くッッッッッッ♡♡♡♡ 特効武器効きましゅッッッッッッ♡♡♡♡」
「その掛け声、なに」
「ん？ あぁ……本来は『鬼は外、福は内』と唱えながら豆を投げる祭りらしい」
なるほど。では次は鬼は外と唱えるのだろう。
「いくぞ、鬼は……外ッ」
「イグイグイグイグイグイグイグイグイグゥゥゥゥゥゥ♡♡♡♡ ケツ穴捲られてイキ死ぬッッッッッ♡♡」
四つん這いになり腰をガクガク震わせながら、相変わらずの大音量で絶叫している。
「早くくたばれ、マゾ鬼。疲れてるんだよこっちは」
「もう少しでHP削りきれますからッッッ♡♡ がんばってください♡♡」
その言葉を聞くと、てらてらと粘液の反射で光っている金棒でおもいっきり鬼の横っ面を張り倒す。なんの罪もないメガネが吹き飛び、壁に当たってかしゃりと床に墜落した。
「『がんばってください』？ 人にもの頼む態度か、それが。ケツイキしすぎて馬鹿になったか？」
言いながら、這いつくばっているスネイルの頭を、体重を乗せて容赦なく踏みつける。
曰く、プレイに付き合ってやった方が早く終わるから効率がいいらしい。毎回このような調子なのでさすがに慣れてきた。が、今回は少し本気で怒っているような気がする。気のせいかもしれないが。
「だいたい硬すぎるんだよ。調整不足だろ。しっかりテストプレイしたのか」
「も、もちろんしっかり調整してま……ひぎっ♡♡ そ、そこはやめて……ッ♡♡」
「やめてじゃないだろ。力かけるほどおっ勃ててるくせに。お前はマゾだからいいかもしれないが上位数%の廃人向けマゾコンテンツばかり追加されてもユーザーは楽しくないんだよ。とんでもないクソゲームだな。今年でサービス何年目だ？ はやくサービス終了しろ」
口を動かしながらも、弱点を責め立てる猛攻は止まることがない。
「はいッッッ♡♡♡♡♡♡ サービス終了させていただきますッ♡♡ 全額返金対応もさせていただきますッ♡♡♡♡」
「よし、よく言えたな。そらッ」
そう言って、全裸で土下座まで始めてしまったスネイルの尻に金棒を根元まで一息に突き立てる。
「ん"ッお"ほ"ぉぉぉぉぉぉぉ♡♡♡♡ イ"グッッッッッッッ♡♡♡♡♡♡ 気持ち良すぎておわるッッッッッ♡♡♡♡♡♡♡♡ 人生サービス終了デスマゾアクメキ"メ"る"ッッッッッ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
どうやら、討伐成功したようだ。特効武器の力はすごいな。
その後は、ぴくりともしなくなったスネイルを二人でどうにか廊下へと運び出した。置いておけば勝手に居なくなるだろうからこれでいいらしい。
「どっと疲れたな……」
「もう寝よう」
そうして、もう一度触れるだけの口付けを交わすと、そのまま眠気に身を任せるのだった。

後日、フロイトからパーツ購入の申請書が通ったから納品されたらやろうという連絡が来た。討伐報酬ということだろうか。
めでたしめでたし。 ]]>
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		<dc:date>2024-05-23T17:54:47+09:00</dc:date>
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		<title>5</title>

		<description>元日。新しい一年の始まり。
取引先も休…</description>
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			<![CDATA[ 元日。新しい一年の始まり。
取引先も休みだから仕事はない。お前もしっかり休んでおけと、ウォルターに休暇を言い渡された私は、フロイトの部屋のコタツでごろごろと温もっていた。
ここが一番色々とおもちゃが揃っていて、退屈しのぎにはちょうどいい。
半ば押掛ける形になってしまったので追い返されるかと思ったが、縮小営業している食堂以外はシミュレーションルームも含めて全て営業停止しており退屈していたらしく、快く迎え入れてくれた。
「半分くれ」
「んー……」
タブレットに視線を固定したまま、こちらにぬっと伸ばされた掌の上に剥いたみかんを半分に割って置く。
どうやら過去の対戦動画や、私の仕事ぶりの録画（どこから入手しているのだろう。オキーフ経由だろうか？）を見返しているようだった。
散々一緒に見たのに、よく飽きないな……と思ったそばから、端末がソファの上へと弧を描いて飛んでいく。渡したみかんも、そのまま全部口の中へと放り込まれていった。
「……暇だな。なにする」
「……ゲーム？」
「どうせならスネイルも呼んでくるか」
「うん。オトシダマもらう」
「いいなそれ。俺も貰うか」
ウォルターから既に貰っていたが、欲しいパーツを買うには足りない。
エアが調べたところ、大人はくれるものらしいので、スネイルならくれるだろう。
期待に胸を膨らませつつ彼の部屋の扉を叩く。
入りなさい、と返ってきたので遠慮なく中へと乗り込んでいく。
「お年玉くれ」「オトシダマちょうだい」
「なんなんですか貴方たち、人の顔を見るなり。フロイトはともかく、駄犬にやる金はびた一文ありません」
「くれないんだ……ウォルターはくれたのに……」
何気のない呟きのつもりだったが、それを聞いた瞬間、スネイルの目の色が変わった。
「は？ あげますが。この私が駄犬の飼い主よりケチだとでも？」
「よかったな」
くれるらしい。よかった。
「ところで、貴方たち。初詣は済ませたのですか」
「いや……？ というか、済ませたくても無理だろここじゃ」
「ならば丁度いい。今からやりますよ。ここで」
「まずい、連勤狂いモードだ。退却するぞレイヴン」
「逃がしません」
その言葉と同時に、外へと続く唯一の扉へ、恐らく部屋の主しか解除出来ないであろうロックがかかる。
叩いても何をしても開かない。
「嘘だろ……」
どうやら、ハツモウデという謎の儀式を執り行うより他に選択肢はないようだ。
軽い絶望を覚えながら、一体如何なる儀式であるのか話を聞くことにした。
「まずこれを私の肛門へ挿入します」
そう言って取り出したのは、尻に入れるタイプの器具が付いた大きな鈴だった。
「既に嫌な予感がするんだが」
「黙って聞きなさい。そしてこれを結んで、天井からこれで私を吊るしてください」
赤と白で結われた縄と、恐らく本人を縛って吊るす用であろう太い麻縄がどかっと目の前に置かれる。
「どこに結ぶ……？」
「陰茎に決まっているでしょうが、駄犬」
「決まってるわけないだろいい加減にしろ」
「決まっていますが。あぁ、吊り上げるのにはそこの装置を使うように」
「200kgに耐えられるのか、天井が」
「我が社の耐荷重を舐めないで頂きたい」
「なら平気か。……クレーンぽいが、見たことない装置だなこれ」
「D.I.Y.です」
ということは、この間ホーキンスが訝しんでいた、ホームセンターからのスネイルに宛てた荷物はこれの材料だったのか。
「吊るのだけやってやる」
「では準備いたしますので見ていてください」
「精神的ブラクラだろ」
なにそれ、と聞いたら見ると気持ち悪くなるようなものを表すときに使うと教えてくれた。
確かに見ていてもしょうがないため、別室で待っていることにした。

しばらく待っていると、どうやら準備が終わったようだ。
もはや考える事を放棄したらしいフロイトが、無表情のままスネイルを麻縄で巻いて、装置で天井へと近づけていく。
少し離れて見物していると、やがてガンッと天井へ激突する音とともにジャランジャランッと景気のいい音色が鳴り、上昇が止まった。
「……出来たな。死ぬほど罰当たりな叶緒が」
「企業たるこの私が神罰を恐れるとでも？」
「少しは恐れた方がいいだろお前の場合」
「確かに、神とやらが与える責めがどのようなものか興味が無いと言ったら嘘になりますね」
「……レイヴン、さっさと終わらすぞ」
「うん。何するのこれ」
「その紐引っ張って、罵倒でもしてやればいいんじゃないか」
頷いて、紅白の紐をグイッと下に引っ張る。
「んお"っ♡」
頭上のスネイルが仰け反ると、それに反応して尻の鈴がジャラジャラと派手な音を立てる。
「えーと、ばか」
「駄犬、真面目にやりなさい」
精一杯やったつもりなのだけど……。
気を取り直して、もう一度紐を引く。
「うーん……あほ、ケチ、もっと報酬増やして」
罵倒、と言われてもよく分からない。最後はお願いになってしまった。
「駄犬……」
「貸せ。こうやる」
そう言って私の手から紐を引ったくると、結び目の部位をひきちぎる勢いでそれを引いた。
鼓膜を突き破るような絶叫と一段と激しく鳴る鈴の音のハーモニーが部屋中に響き渡る。恐らく隣室まで聞こえているだろう。
「ちんこに結ぶとか言っといて金玉じゃないか。お前本当に好きだな。コールサインをキンタマゾにでも変えてもらったらどうだ。そうしたら皆から呼んでもらえるぞ。好きだろ、罵倒されるの」
言い終わらないうちに、紐を引いてもないのに鈴が鳴る。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ♡♡♡♡」
「今想像しただけでイッただろ。本当に手の施しようがないド変態のクソマゾだな」
また尻から音が鳴った。
「そんなに去勢好きなら耳も切っとけ。お前がタマなしタネなしでケツほじくられて悦ぶ情けのないマゾオスだって事が誰にでもわかるようにな」
「ひゃい……♡♡ 皆様にタマなしケツマゾ奴隷だと知っていただくため耳切ります♡♡ コールサインもキンタマゾに変えます♡♡♡♡」
鈴の音が今日一番の音量で響く。
恐らくハツモウデとは、なるべく手を使わずに鈴を鳴らすゲームなのだろう。今回はフロイトに勝ちを譲ることになってしまった。次までにもっとスネイル……改めキンタマゾがよろこびそうな言葉を勉強しておこう。
「よく言えたな。来い、レイヴン。聞き分けのいい畜生にはご褒美をやらないとな」
どうやら、息を合わせて紐を引けばいいらしい。
掛け声に合わせて、フロイトと一緒に思い切り引っ張る。
「ん"お"ッッッッッッッッ♡♡♡♡♡♡♡♡ ほ"ッぉ"ぉ"ぉ"ぉぉぉぉッッッ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
力を入れすぎたのか、または激しく暴れすぎたのか、天井から吊り下げていたフックが外れ、雄叫びをあげたままのスネイルが床にたたきつけられ、人型の巨大な穴をあけてしまった。
どうやら本人はそのまま気絶してしまったらしい。
「終わったか。正月からやらせるなよこんなこと……。戻るぞレイヴン。疲れた、寝る」
「縛ったままだけど」
「ほっとけ。そいつが本気を出したらそんな拘束くらい簡単にちぎれる」
「そっか」
ならば放っておこう。
私たちを閉じ込めた扉のロックも、いつの間にか解除されていた。
何とか脱出を果たした私たちは、フロイトの部屋に戻って、二人で残りの休暇を目一杯堪能したのだった。 ]]>
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		<dc:date>2024-05-23T17:54:18+09:00</dc:date>
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		<title>4</title>

		<description>12月の24日。この日は、クリスマスという…</description>
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			<![CDATA[ 12月の24日。この日は、クリスマスというお祭りをやるらしい。思い思いに飾り付けをして、大切な人に贈り物をする日だとウォルターが教えてくれた。
彼になにか贈りたいのだが、どんなものなら喜んで貰えるだろうか……。カーラに相談したら「ビジターが友達と楽しそうにしてるとこでも見せてやったら喜ぶだろうね」とアドバイスをもらった。

友達か。エアは見せれないしイグアスとかラスティとかフロイトがいいかな、と思ったのだが、以前ラスティと遊んだことをウォルターに伝えたら私にもわかるくらい嫌な顔をしていたし、イグアスには「野良犬と写真なんざ撮るわけねーだろ」と断られてしまった。
フロイトはというと、「やってくれるなら別に構わない」と言うので、こうしてアーキバスロビーの大きなクリスマスツリーの前で彼を待っているというわけだ。
ぼーっとツリーのてっぺんを見上げていると、不意に後ろから伸びてきた手に頬を挟まれ、同時に耳元に温かい風を感じる。
「よぉ」
その声とともに、いつものように頬と髪をもみくちゃにされる。抗議の声をあげても無駄なことはわかりきっているので、満足するまで大人しくされるがままになっておく。
「何見てたんだ」
「これ」
「あぁ、クリスマスツリーか。興味あるのか」
「うん」
「そうか。……やりに行くぞ。時間が惜しい」
「ん」
そうして、半ば引きずられるようにその場を後にする……。

……ぶっ続けで対戦していたら、すっかり日が暮れてしまった。
「手術、しないの」
過負荷で鼻血を出しているフロイトの顔を拭ってやりながら、そう問いかける。自分で拭けばいいのに、毎回私にやってくれとせがんでくる。
「必要だと感じないからな」
それに、チカチカする視界越しにお前の顔を眺めるこの感じも悪くない、と付け加える。
「……？ よくわからない。あなたがいいなら、いい」
そう答えると、何故か鼻をつままれてしまった。
「ふが」
「……腹減ったな。戻って飯にするか」
「うん」

シャワーで汗を流して、晩御飯を済ませて、フロイトの部屋で今日の対戦動画を見るためにモニタの準備をしていると、来客を報せるベルが鳴る。
「出てくれ」
「わかった」
扉の横についているパネルを操作して開けるとそこには、スネイルが、謎の箱と共にたっていた。
「何……？」
「駄犬、フロイトを出しなさい」
「フロイト、スネイルが来た」
「よぉスネイル……なんだその箱。プレゼントか？」
「何って、飾りですよ。クリスマスツリーの」
「ツリーがないだろ」
「私ですが」
「は？」「え？」
あまりにも突拍子のない答えに二人して困惑の声をあげる他ない。
「毎回毎回貴方たちに邪魔されますからね。先手必勝というわけで私から出向いてさしあげたのですよ。光栄に思いなさい」
「そういうサービスは頼んでないんだが。帰ってくれ」
「帰りません。入れなさい」
双方譲らず、玄関先で取っ組み合いが始まってしまった。
190cm近い体躯と、2m越えのボディが組み合う姿はなかなか迫力がある。さながら怪獣映画のワンシーンのようだ。
しかし、真人間の中では頑丈で力も強い方であろうフロイトも、最新鋭強化人間にはかなわず、フン！とスネイルが力むと突破されてしまった。
床に尻もちをついて、起こしてくれ〜と私に助けを求めている彼に手を貸しながら、一体全体何が始まるのかと見守る。
「では、今から脱ぎますので、貴方たちはそこの手順書に沿って作業をするように」
「おいやめろ。レイヴンに変なもの見せるな。脳にダメージ入ってAC出来なくなったらどうする」
一体何を見せられるんだろう。ろくなものでは無いのだけは確かなのだが。
スネイルは、終わるまで断固として帰りません、という態度を崩さない。
フロイトも諦めがついた……というより面倒くさくなったのか反論するのをやめたようだ。
私といえば、突っ立っていても仕方が無いので、手順書（丁寧に図までついている）を読んでいた。
「手順1、ギャグと目隠しを装着して、手首足首を拘束……」
「いるのかこれ」
「いるでしょう。木が物を見たり話したり動いたりしますか？」
「なるほど……？」
そう言われると、筋が通っているような気がする。
「……高いところは俺がやる。お前は縛るのをやれ」
わかったと返事をして、まず足首に箱に入っていた足枷（と言うのだろうか）を嵌めて、次に後ろ手に手首を拘束する……私は一体何をさせられているのだろう。
「終わった。次……でんしょく？で飾り付ける」
「多分これだろ」
そう言ってフロイトが箱から取り出したのは幾つも小さな電球が付いているケーブルだった。
「ん……これ、電気はどこから……」
「先に付いてるそれを尻に入れると光るんじゃないか。そういう形状だ」
よく分からないということだけが分かった。とりあえず、ケーブルをツリーに巻いていくことにする。
端まで巻き終えて……完成だ。
大きさはロビーにあったものに負けるが、迫力は負けていないな。
あとは、仕上げだ。
「えい」
「ッ"♡♡♡♡ オ"ッ♡♡♡♡♡♡♡」
ズボッと勢いよく謎の器具を尻に突っ込むと、いつもよりくぐもっているが変わらず大音量の呻き声が頭上から聞こえてくる。
「うるさいな……。木なんだから静かにしてろよ」
「…………ッッッ♡♡♡♡」
ドスッと鋭い蹴りが、木の股の部分に直撃……したかと思いきや、ケーブルに接続されている色つきの電球たちが激しく光を発し始めた。
どうやら何らかの刺激を本体に与えると、感じた刺激の強さの分だけ光る仕組みのようだ。
「どこで売ってるんだよこんなもの……」
私もやってみるかと、箱に入っていた幾重にも先が分かれている鞭（おそらく鞭だろう）で軽く尻を叩いてみる。すると、微かに電球が光った。
次は、渾身の力を込めて思い切り、尻肉を鞭で引っぱたく。そうすると、ビガビガと目がどうにかなりそうなくらいの光が部屋に降り注いだ。
「オ"オ"オ"オ"オ"ォォッッッ♡♡♡♡♡♡」
窓の震える大声量のおまけ付きだ。
「仕組みはわかったが……どうするんだこれ」
「『飽きるまで遊んだら、そのまま放置して頂いて結構です』って書いてある」
「こんなもの一晩でも部屋に置いておくの嫌すぎるだろ」
さりとて、廊下に出すにしても合金骨格で重いボディを運ぶ術がない。
「仕方ないか……。レイヴン、せーので思い切り叩くぞ。限界を試してみたい」
「わかった」
「よし。いくぞ……せーのッ！」
掛け声と共に、私は尻を鞭で引き裂けんばかりに打ち、フロイトは股間を勢いをつけて蹴り上げる。挟み撃ちの形だ。
「ン"ッッッ♡♡♡ォ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッッッ♡♡♡」
突き破るような雄叫びと共に、ルビコン中を照らせるのでは無いかと思うくらいの光が放たれる。
眩しい。これがルビコンの夜明けか。
その後は、器具も本体も限界を迎えたのかうんともすんとも言わなくなってしまった。
そういえば、ウォルターに見せるための写真が必要なんだった。
夜明けの記念に一枚、ぐったりしたツリーをレンズに収めて記録する。
「疲れたな……寝るか」
片付けは明日でいいだろ……、とボヤきながら寝室へフラフラ向かうフロイトの後に、私も続いていく。

翌朝、ツリー……もとい、スネイルの拘束を解くとそのまま黙って服を着て、黙って床に飛び散った体液の掃除し片付けた後、「お邪魔しました」と一礼をして去り、私たちは昨日の騒ぎが嘘のように空っぽになった部屋に取り残された。
「なんだったんだ一体」
「わるい夢かも」
聖夜の見せた一夜の幻だった……と思いたいが、端末に残った写真がそうでは無いことを示しているのだった。 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2024-05-23T17:54:00+09:00</dc:date>
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	<item rdf:about="https://wisteria.novel.wox.cc/entry23.html">
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		<title>3</title>

		<description>年の瀬、新年が刻一刻と近づいてくる夜。…</description>
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			<![CDATA[ 年の瀬、新年が刻一刻と近づいてくる夜。
私はフロイトの部屋でコタツという謎の暖房器具に身体を突っ込みながら、ソバという、揚られたエビの乗った、これまた謎の麺類を啜っていた。
かつて地球にあった、ヤーパンとかニッポンとか呼ばれていた国の風習らしい。
そういえば、ロックスミスの操縦席に掛けられていたアミュレット（オマモリと呼ぶらしい）もそこの文化だと言っていたな。なんでも寺院でACに祈祷をあげてもらうとくれるのだとか。
特定の信仰があるのか、と聞いたらそういう訳では無いと言っていた。
しかし、一体どこでそういう情報を仕入れてくるのだろう。案外廃れないで残っているもんだ、とは彼の弁だが……。私が忘れてしまっているだけなのか？
「何見る」
「ACプロレス」
年末特番だ。
「よし……。いや、ちょっと待て」
「なに」
「先にアレを黙らせてからにするぞ」
アレとは恐らく、あの独特な騒音をたてる隣人のことだろう。
無視が出来ればいいのだけれど、それが叶うような音量では無い。先に静かにさせておくというのは、確かに理にかなっている。
「ついてこい」
「うん」
二人して隣室へと向かい、解除キーを入力して扉を開ける。
今回はあの雄叫びが聞こえてこないな……。留守なのだろうか？
そのまま部屋を奥へ奥へと進んでいくと、居た。
全裸で床に四つん這いになりながら、どう見ても人体に入れる形状をしていない棒を、今、まさに、尻に挿入せんとしているところだった。
「……なんなんですか！？ 貴方達毎回毎回！」
「うわ」
「エグいな。ドラゴンとかそういうやつのか？」
「来年は辰年なのですからそうに決まっているでしょう」
「きまってるの？」
「そんなわけないだろ」
「それで、何をしに来たのですか」
声に明らかに苛立ちの色が含まれている。早く出て行けと言わんばかりだ。
私だって、フロイトもだろう、好きでこんなとこに来た訳では無いのだが。
「手伝いに来てやったぞ。またうるさくされたらたまらないからな」
「は？」
「レイヴン、除夜の鐘って知ってるか」
「しらない」
「年越しに鐘をつくんだよ。108回。煩悩を祓うんだと。こいつに同じことしてやれ。デカい音出るし鐘みたいなもんだろ」
「わかった……けど触りたくない」
「駄犬ッ！ 人のことをなんだと……」
「マゾ豚だろ。レイヴン、蹴り入れてやれ」
「ん」
そのまま、言われた通りスネイルの尻に添えられている謎の棒目掛けて脚を振るう。
勢いをつけすぎたのか、臀部に脚がバチンッという音を立てて綺麗にぶち当たってしまった。
棒が、ズボッと肛門の中へと打ち込まれていく。
「んぎぃ！？！？！？♡♡♡♡♡」
「音出た」
「まず一回だな。次行くぞ、抜け」
ご丁寧に、引っこ抜くための紐が棒の底に括られている。それを掴んで、全部出ないように、ゆっくりと引き抜いていく。
「ん"お"お"お"お"ぉぉぉぉ……♡♡♡」
「これもカウントする？」
「しない。鐘はついた時に鳴るもんだからな」
「わかった」
ということは、あと107回か。気が遠くなりそうだな。
「疲れたら代わってやるから言え」
そのまま、二回、三回と回数を重ねていく。
しかしこの棒、やたらトゲが生えていたりなんだりしているのだけれど、こんなものを尻に入れて大丈夫なのだろうか。
最新の調整、と言うやつのおかげで大した事ないのかもしれない。技術の進歩はすごいな。

そんなこんなで、105回までは終えた。さすがに疲れたし、大きな音を聞き続けたせいかクラクラする。
さすがのスネイルも、四つん這いが崩れて、尻だけを高くあげるような姿勢になりながら全身を震わせている。
「フロイト……かわって」
「あと三回か。やるか」
フロイトが立ち上がって空いた椅子に今度は私が腰掛ける。まだ体温が残っていて温かく、ふかふかで心地が良い。目の前の騒ぎさえなければ、このまま眠ってしまいそうだ。
フロイトはというと、尻の方には向かわず、顔の方へと回り込んでいた。
両手はジャケットに突っ込んで、いつものやや猫背の姿勢のまま、履いている軍用ブーツのつま先で、スネイルの顎を持ち上げている。
何をするつもりか見ていると……そのまま思いっきり、顎を蹴りあげた。
いつもスネイルの顔にかかっているメガネが、部屋の隅へと吹っ飛んでいく。
「四つの足で立てよ。畜生だろ」
「はいっ♡♡ すみません♡ 愚かな畜生めの私に、躾をして頂いてありがとうございますッ♡♡♡」
「畜生が人の言葉で話すなよ」
と、今度はかがんで、髪を引っ掴むと、めり込む勢いで床に押し付けている。
すごいな。映画のようだが、それより遥かに臨場感がある。
「さて……かったるいが、やるか」
そう言って、尻穴に突き刺さったままの棒を引き抜くのかと思いきや、もっと前の方……所謂急所に勢いの乗った蹴りを入れる。
「いぎっ♡♡ そこはやめッ……♡♡♡」
「キンタマ蹴られてイキながら言うセリフじゃないだろ。畜生らしく鳴いてろ」
もう一発。
「ぶひっ♡♡♡ ぶひぃぃぃぃぃぃぃ♡♡♡」
普段のスネイルにこれを録音して聞かせたら、そのまま倒れそうだな。
そして、とうとう最後の一撃だ。
「ん"おぉぉぉ♡♡♡ イグッ♡♡♡♡♡ キンタマ蹴られて去勢されてるところ駄犬に見られながらイグッッッッ♡♡♡」
最後の咆哮が響くと同時に、カチッと時計が0時を刻む。
新しい年の幕開けだ。
「あけた」
「あけたな。ちょうどいい、もどるか」
「うん」
「あぁ……スネイル、あけましておめでとう」
「おめでとう」
床で潰れたカエルのようになっている彼に新年の挨拶をして、私たちは部屋を後にした。

 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2024-05-23T17:53:43+09:00</dc:date>
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	<item rdf:about="https://wisteria.novel.wox.cc/entry22.html">
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		<title>2</title>

		<description>ここ、アーキバス・ルビコン3拠点には脈々…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ ここ、アーキバス・ルビコン3拠点には脈々と語り継がれる怪談がある。
ある隊員の目撃証言によると、雪の降る音すら消えるような深夜に、男のものと思われる不気味な声だけが響き渡っていた。不審に思って音の源を探りに行くと、そこには反り立つ壁のように大きくて白い怪物がいたらしい。
隊員は、驚きと恐怖のあまり声も出ずほうほうの体で逃げ帰ってきたそうだ。

「……という話だよ。こわいねえ」
「はへぇ……」
と、さっきまで怖い顔をしていたがいつものニコニコとした顔に戻ったホーキンスが言う。
今日は、いつものように模擬戦を行う予定で遊びに来ていたのだが、シミュレータが全台臨時メンテナンスで使うことが出来ず、共用スペースでぼーっとしていた。
テンションの下がりきったフロイトは隣で不定形になりながらソファにもたれかかっている。
仕事があるから、またねと言って立ち上がったホーキンスに挨拶を返して、不定形生物の肩（だったと思われる部分）を揺する。
「怪物だって」
「イエティだろ。ムーで読んだ」
やる気の全く感じられない至極ダルそうな返事が返ってくる。
彼の部屋に山ほどバックナンバーが積まれているあの雑誌か。20世紀からあるらしい。どこで手に入れてくるのだろう。
「イエティ……？」
「白い毛むくじゃらの、二足歩行のバケモンだよ」
そんなのが本当に居るのだろうか？ 珍しい生き物のようだし、写真を撮ってウォルターに見せてあげたら喜んでくれるかも……。
「見たい」
「ネットにいくらでもあるだろ」
「ちがう、ほんもの」
どうにか元の形に戻ってもらおうと頬や髪などを捏ね回していると、鬱陶しかったのか抱きしめられて身動きを取れなくなってしまった。
体温を堪能するかのようにしばらくそのままでじっとしていると、やがて離れていって、そのままスっと立ち上がった。
「……やるか。化物退治」
別にそこまでするとは言ってないのだけど……。やる気になってくれたのならいいか。

深夜二時。
防寒着に身を包んだ私達は、雪原の真っ只中に佇んでいた。
第一次独立傭兵＆アーキバス共同怪異討伐部隊。
私は撮影係だ。携帯端末で録画を回しながら、懐中電灯で前を照らすフロイトの後を、降り積もった雪の上を何とか歩いて、ついて行く。
「この辺りだな」
目撃証言のあったところは、アーキバス拠点裏手の小高い丘を登ったあたり。ちょうど拠点を見下して一望できるような場所だった。

ォォォオオオオオォォォ……

一息ついていると、冷たい風に乗って不気味な声が響いてくる。
「今……」
「聞こえたな。向こうの方だ」
行くぞ、と腕を引かれて声のした方へと向かっていく。

ホォォォォォ……

「近い」
「準備いいか」
ザクザクと雪をかき分け進んでいくと、遠目に怪談の通り大きく白い怪物の影が暗闇の中揺らめいている。
数メートルの所までそろそろと近づいて電灯の光を向けるとそこには……！
「なッ……！」
「は？」
「え……」
痺れるような寒さの中、何故か全裸のV.IIスネイルが、何故か後ろ手に縛られて足だけ自由な状態で硬直していた。
まさか、怪物の正体がこれだったとは。確かに怪音波を発していて、遠目に見たら話の通りだったが……。
「これじゃ、ウォルター喜んでくれない……」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ♡♡」
「それでイくのかよ」
マゾすぎるだろ、と呟いたその言葉でまた先程のようにぶるぶると身体を震わせていた。
「……貴方達、このようなところで何をしているのですか」
気を取り直したのか、いつもの調子でこちらに問いかけてくる。格好はそのままなので、ちぐはぐでなんだかおかしい。
「こっちの台詞だろ。俺たちはただ化物退治に来ただけだぞ」
「スネイルだった……」
ある意味怪異ではあるのだが。
「さっきから聞いていればなんなのですかッ！？ 人のことを化物だのなんだの！ 駄犬ッ！ あからさまに失望した顔をするなッ」
「その格好でキレても面白いだけだぞ。というか、知らないのか。例の話」
かくかくしかじか、事の成り行きを説明する。
部隊中で噂になっている、ホーキンスも知っている、の辺りで様子がおかしくなったが気にしないことにした。
「で、蓋を開けてみれば正体はお前だった。期待はずれだな」
帰るぞ、という言葉に頷き、スネイルに背を向けてとぼとぼ歩き出す。
待ちなさいッ！という静止が聞こえたが、もう振り返る気力もわいてこない。
「……ほっといていいのかな」
「ほっとけ。それはそれで悦ぶだろ」
「そっか」 ]]>
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		<dc:date>2024-05-23T17:53:21+09:00</dc:date>
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		<title>【R-18】マゾ 1</title>

		<description>「いたっ」
首筋を噛まれて、思わず声を…</description>
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			<![CDATA[ 「いたっ」
首筋を噛まれて、思わず声をあげる。
「手はやめろ、手は」
お返しにがぶっとやったのだが、少々力が入りすぎてしまったらしい。フロイトの左手にはくっきり歯型が残っていた。
「やれなくなったらお前も困るだろ。退屈で」
「そう、かも……」
謝る代わりに、動物がするように、私がつけてしまった跡を舐める。
「舐めるならこっちにしろ」
そう言って、自分の唇を指さす。
「したいなら、そう言えばいいのに」
「それじゃつまらないだろ」
どうやら催促して、私からしてもらうのが好きらしい。他のことはどんどん自分からくるくせに、変なところで受け身だな。
《甘えているだけなのでは？》
……そうなのか？ わからない。
まぁ嫌ではないからと、毎回誘いに乗る私も私なのだろう。
瞳を閉じて、顔を近づけていく――。

――――
一方その頃隣室では、V.IIスネイルが、品名の絶妙に誤魔化された配達票の貼られた箱を前にしていた。
中身を傷つけないように封を切り、箱を開けていく……。
雷を操るトカゲの描かれた、かなり大きめのパッケージ。彼の注文した通りのものだ。
それも開封していくと中から出てきたのは、成人男性の腕ほどもある……いや、それより太い異形の張形であった。用途の分からない……分かりたくもないクリップ型の電極も二つ、同封されている。
常人には理解の及ばない構造をしたそれを目の前にし今宵の“宴”を想像し、腹の底から湧き上がる歓喜に打ち震えた。
薄暗い部屋の中、一枚ずつ衣服を剥ぎ、丁寧に折りたたんで床に積み上げていく。
一切無駄のない整った身体と、厚い胸板、幅が広いが肉は引き締まった臀部が露わになる。
その姿のまま、例の異形を床に固定して、上からゆっくりと潤滑剤を塗り込んでいく……。
このようなことをしなくても、彼の開発されきった強化肛門はなんなくそれを受け入れるだろう。しかしこの意味の無い手順こそが、儀式の質を高める……とは本人の弁である。
全ての準備が整うと、己の尻穴と固定された張形との座標を合わせ、ゆっくりと腰を下ろす。
「ん"お"ぉ"ッ♡」
体内を掻き分けられ、拡張される感覚に呻き声が漏れる。しかしこれで終わりでは無い。まだ半分ほど残っている。
「ん"ぎぃッ♡」
全てを飲み込み、尻と床が接地する。なかなかの強敵であったようだが、歴戦の尻穴の前には敗北を喫するしかなかったようだ。伊達にヴェスパー上位ではないということか。
されどまだ、異形の方は手を残している。用途不明のふたつのクリップが、それぞれ乳首に装着され――。
瞬間、電流がバチバチとふたつの突起に容赦なく襲いかかる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ♡♡♡♡♡♡♡」
一際大きく、声にならない声をあげながら、折れるのではないかと思うほど身体を仰け反らせる。
――――

「……いま、なにかきこえなかった？」
「聞こえた」
フロイトの部屋で一緒に狩りゲーをやっていたところ、明らかに画面内のモンスターのものでは無い咆哮が響き渡る。
「おばけ？」
「それよりは面白い。ついてこい。見られてた方が悦ぶだろ、あいつも」
一体何なのだろう……。画面を一時停止して、彼について行った先はすぐ隣の、スネイルの部屋だった。
ロック解除のパスワードを知っているのだろう。カードを通すことなく扉を開け、部屋に踏み入ってから、入るぞと言っている。
部屋の中は電気がついていない。奥からはまだ謎の雄叫びが聞こえてくる。まるでホラー映画の中にでも迷い込んだみたいだ。
壁伝いに恐る恐る進んでいく私の前を、フロイトは何でもないかのようにズンズン進んでいく。
「またやってんのか」
「フロイト！？！！！？！？！？ 駄犬まで、何故ここに！？」
「デカすぎるんだよ、声が。丸聞こえだ。前も言っただろ」
常習なのか。さらに隣の部屋のオキーフが、時折寝不足気味な理由がわかった気がした。
面白そうなものがあるじゃないか、と言いながらフロイトが床に落ちていて……見間違いではなければスネイルの方に伸びているケーブルに繋がった、コントローラーのようなものを拾い上げる。
やめなさい！！という静止を全く無視して、それのツマミをすこし、右側に回す。
「ひぎぃッ！？♡♡」
瞬間、胸の辺りで青い稲妻が走って、2mを越す巨体が仰け反る。
「いいくせに、やめろじゃないだろ。マゾ豚」
まるでなんと言えば悦ぶのか分かってるかのように、スラスラと言うな……。
「レイヴン、これ持ってろ」
その言葉と共に、私に例のコントローラーが手渡される。
「こいつが“お願い”できたら、それをめいっぱい右に回せ」
「わかった」
「ほら、あいつが全部握ってるぞ」
イカせてくださいってお願いしてみろ、と言いながらいつの間に履き替えたのか、普段履いている軍用の底の厚いブーツで、上着に両手を突っ込んだまま、股間のあたりを踏み潰している……。
もしかして、私は今なにか凄い現場を目撃しているのでは？
よくわからない。とにかく言われた通りにしよう。
「だ、駄犬ッ！（そうじゃないだろ、と蹴りが入る。見るからに痛そうだ）いぎッ♡ お、お犬様！ お願いしますッ！♡ この愚かで惨めな豚めをイかせてくださいッ！♡」
これがお願いだろうか？ 内容は全く意味不明だが、しっかり聞き届けた。えいやと、言われた通りにコントローラーを操作する。
火花を上げながら、対AC用スタンバトンのような威力の電流が流れた気がするが……気のせいだろう。
「ん"お"おぉぉぉぉ"ッ！イグイグイグイグッ！♡ V.IIスネイルッ！駄犬に電流流されて、見られながら乳首アクメキメるッ！！♡♡♡ フロイト、見ててくださいッ♡♡ 旧世代型に無様屈服マゾアクメするとこ見ててッ♡♡♡」
「見せられても困るだろそんなもの」
「お”ッッッッほ”ぉぉぉぉぉぉッッッッ♡♡♡♡♡♡」
窓がガタガタと震え、こちらの耳がどうにかなってしまいそうな音量で叫んだあと、それまでが嘘のように静かになってしまった。
「しんだ？」
「ほっとけ。静かになったな、戻るぞ」
「夢に出そう」
悪夢だな、などと会話しながら、ゲームの続きをするために、惨劇の現場を後にしたのだった。 ]]>
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		<dc:date>2024-05-23T17:52:08+09:00</dc:date>
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		<title>8</title>

		<description>ジリリ、というアラームの音で私は目を覚…</description>
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			<![CDATA[ ジリリ、というアラームの音で私は目を覚ます。
時刻を確認すると、朝の9時だった。
ルビコンの朝は冷え込む。布団から手だけ伸ばして、空調のスイッチを入れて、部屋が暖まるまで待つ。

今日は、予定がない。何をしようかなぁと毛布にくるまりながらぼんやり考えていると、携帯端末に通知が入る。
新着メッセージが一件。送り主はフロイトだった。
悪魔的直感で私の起床を感知したとしか思えないタイミングだ。
『今日来れるか。やろう。新しいパーツを買った。試したい』
『ムリ。行けない。機体がメンテ中』
バツ印のスタンプと一緒に、返信する。
『迎えに行く』
『起きたばっか。一時間後くらいに来て』
『了解』
……着替えて、食事にするか。
のそのそと布団から這い出して支度を整え、ウォルターお手製の朝食が待っているであろうダイニングへと向かう。
今日のメニューはトーストと、ベーコンの添えられた目玉焼き（半熟だった）にフィーカだ。
「ウォルター、しばらくしたらフロイトが来る」
ほとんど黒に近い濃い茶色の液体にミルクを注いでかき混ぜながら、そう伝える。
「構わないが、何をしにくるんだ」
「迎えに来る。向こうで遊びたいって」
「わかった。……あまり迷惑をかけるな」
「うん」
電波放送を流し見しながら、目玉焼きを乗せたトーストをもそもそと口の中に詰め込んで咀嚼し、胃袋へと落としていく。
最後の一切れを放り込んだと同時に、『着いた』とメッセージが来た。
「じゃ、いってくる」
「遅くならないようにしろ」
「わかった」

ガレージに向かうと、ちょうど操縦席から降りてきたところだった。
「よぉ」
「おはよ……うっ」
最後まで言い終わらないうちに、顔を両手で挟まれてもみくちゃにされる。
「これ……むぐ、いつもするけど……あぅ、なんかいみあるの」
「あるわけないだろ」
「そっか」
それならそれでいい。ひとつ疑問が解決してすっきりした。
「行くか。乗れ」
「ん」
返事をして、フロイトの後に続いてロックスミスの操縦席に乗り込む。二人で乗るとさすがに窮屈だ。
初めて中を見たけれど……なんだか変な改造がたくさん施してあるな。
スピーカー？とか、何に使うのか分からない差込接続器が取り付けられている。ACの中に住むつもりなのだろうか……。この人ならやりかねない。
「あまりその辺いじくるなよ」
「うん」
うっかり触って壊してしまったら……雪原に放り出されるだろうな。それは避けたい。
膝の間に収まって、到着するまで大人しくしていることにする。
――――
「うーん……」
「イマイチだったな。次までにもっと面白い組合せを考えておく」
新パーツのテストを終えた私達は、休憩がてらシミュレーションルームで録画を見返していた。
あまり調子が良くなかったのもあり、お互い不完全燃焼気味だ。
「……あれやるか。パルス浴」
「なにそれ……」
「HI-16：GU-Q1、あるだろ。アレの出力を絞って距離と角度を調節して浴びるんだよ、生身で。そうすると……トベる」
AC用の武装を生身に使うのか……。一歩間違えたら死ぬのでは？
「やめておく」
「そうか。確かにいきなり生はやりすぎかもしれないな。ACに乗ったままでも効く数値を見つけておく」
そういう問題なのか？ でもACにのったままなら試してみてもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、廊下の方からバタバタと足音が近づいてくる。
「フロイトッ！ こんな所に居たのですか。緊急の出撃要請です。早く準備なさい」
「スネイルか……。わかった、すぐに行く」
また、と別れを告げて、小さくなっていく彼の背中を見送った。
「駄犬、貴方も戻りなさい。もう用はないでしょう」
「うん。……あ」
「なんですか」
「帰れなくなった……」
「は？」
全く意味がわからないという顔をしているスネイルに、今日の経緯を説明する。
ロックスミスが出払ってしまったら、私にウォルターの元へ帰る手段はない。
「はぁ〜〜……。仕方ありません。この私が送って差し上げます。光栄に思いなさい」
「うん。たすかる。ありがとう」
早くしなさい、と言って格納庫へと向かったスネイルの後を追う。が、一歩が大きすぎる。どれだけ頑張って追いつこうとしても前をノシノシ進んでいく彼に一向に追いつくことが出来ない。
格納庫に着く頃にはすっかり息が上がってしまっていた。
「これくらいで息が上がってしまうとは。なんと情けない」
もはや言い返す気力もない。
乗りなさい、と言われるままにオープンフェイスへ乗り込む。
ロックスミスと違って、操縦席には余計なものが一切なく、整然としていた。
「駄犬、大人しくしているように」
発進した機体を自動航行モードに切り替え、帰路に着く。
「……なんか、遅くない？」
「放り出しますよ」
重量機なのは知っていたが、思っていたより遅くつい声に出てしまった。
オープンフェイスの機体構成は、やりたいことがはっきりしていてわかりやすい。
何となく搭乗者に似ている気がする。一見落ち着いているが、その実案外気が短くガンガン前に出ていくパワータイプなところとか。
これを言ったら今度こそ本当に放り出されるだろう。脳内だけに留めておこう。

特に会話らしい会話もなく、沈黙のまま数分が過ぎ、ようやくうちへと戻り、ウォルターが出迎えに来る。
「621、帰ったか……V.II？」
「毎度うちのフロイトがご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
その言葉だけでウォルターは全てを察したようだ。
「……上がっていくか。茶くらい出そう」
「いえ、まだやるべきことが残っていますので。これで失礼します」
「そうか」
「ばいばい」
そう言うと一瞬苦虫を噛み潰したような顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻り、では、と一礼してノシノシ去っていった。
「苦労しているようだな……。621、夕飯にするか」
「うん。おなか空いた」
今日の夕飯はなんだろう。ウォルターの作るものはなんでもおいしい。
「すぐに出来る。先に着替えてこい」
「わかった」
そう答えて、私は玄関ドアを閉め、自室へと向かうのだった。 ]]>
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		<dc:date>2024-05-23T17:51:50+09:00</dc:date>
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		<title>7</title>

		<description>「おや、レイヴン。また遊びに来たのかい…</description>
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			<![CDATA[ 「おや、レイヴン。また遊びに来たのかい」
「フロイトに呼ばれた」
いつものように呼び出されて、というより事前に約束していた、落ち合うはずの寮ロビーへとやってきていた。
時間が迫っているが、苦い泥水（名前を忘れてしまった）を啜っているオキーフとホーキンスしか見当たらない。
大抵の場合先にいるか、物陰からぬっと出て驚かしてきて、私が固まってる間に連行されるのだが。
「あぁ……うちの首席が済まないね、いつも」
「かまわない……私も、嫌ではない。嬉しいのだと思う、多分」
ゴホゴホとオキーフがむせる音が聞こえる。目の前のホーキンスも、見かける時はいつもニコニコとしている顔をより一層ニコニコさせていた。
何か変なことを言ってしまったのだろうか……。
「レイヴン、待たせたな」
「ん、今来た」
データ確認する、と言ってソファに腰を下ろすと彼も隣にどすっと腰掛けてくる。衝撃で、私の身体が数センチほど宙に浮き上がった。
「あれ……？ フロイト、これ壊れてる」
アーキバスのシミュレータ用アセンブリアプリを立ち上げたタブレットを指さして、アーキバス系列のパーツしか選べなくなってると言うと、あー……と至極ダルそうな返事（？）が返ってきた。
「忘れてた、こないだのアプデでそうなった。昔のデータからロードするなら使えるが、組替えとか新規は無理だな。うちの系列しか選べない」
「くそげ？」
最近覚えた言葉だ。こういう時に使うらしい。
「クソゲー、だな。確かに」
困った。ぜひ試したいアセンがあったのだけど。テスト用AC相手じゃつまらない。やっぱり、肉入り……それも、できるだけ動ける相手……がいい。
「じゃあ、うちのでやろう。パーツ全部ある。拾ったのも登録した」
「拾ったやつも使うのか？ イカれてるな。最高だ」
早速、行くぞと立ち上がる。モタモタしていると、端末をとりあげられて、米俵のように担ぎあげられてしまった。抗議の意味で背中をぺしと叩くが、上機嫌で廊下をズンズン進んでいく彼は全く意に介さない。
まぁ、楽だしこのままでいいか……。

「行ってしまったねえ」
「……ラスティが居なくてよかったな」
「本当にねえ」
後日、一部始終がV.IVの耳に入り、一方的な仁義なき戦いが繰り広げられることになるのだが、それはまた別の話。

二人でACを飛ばすこと数分、私とウォルターの拠点に到着する。
そういえば、ウォルターに許可を取るのを忘れてしまった。シミュレータを使うだけだし、問題ないだろう。
「621……友人を呼ぶ際は一言言え、と……」
「お邪魔します。アーキバス・ヴェスパー部隊所属、V.I フロイトです」
真面目くさった自己紹介、やればできるのか。
隣のフロイトに私の思考が伝わったらしく、たまにはいいだろ、と小突かれてしまった。
「シミュレータ使いに来た」
「……そうか。あまり、面倒は起こすな」
起こすなと言っても、起こす時は起こすだろうな。
「あれがハンドラー・ウォルターか。表に出さないようにはしていたが、面食らってたな」
「そう……？」
私には、普段と変わらないように見えた。私の方が長く接しているはずなのに……。
目がいいな、相変わらず。
そんな話をしているうちにシミュレータルームにたどり着き、システムを立ち上げる。
「うお、本当に全パーツ揃ってるな」
見たことないのもある、と案の定大興奮している。
「……俺、ここに住もうかな」
「えぇ」
「呼び出されたら向こうに行けばいいし、会議やなんかはリモートでどうにかすればいいだろ」
会社勤めのことはよく知らないけれど、それはまずいのでは。
「それにお前がいるから、毎日退屈することもない。……アリだな、かなり」
「ウォルターが許さないと思う……」
それに、V.IIがなにがなんでもそれはやめさせるだろう。
「そうか……。ま、いい。アセンすんだか」
「うん」
「じゃ、やるぞ」
いつもの通り、BO10。10戦やって6回勝った方が勝ち。今のところ戦績はほぼタイだ。リードしたと思ったら取り返されて、という感じで続いていた。

10戦終えて、なにかつまみながら録画を見返そうと居住空間の方へ向かうと、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
部屋を覗くと、そこにはウォルターに謝罪に来たらしいスネイルがいた。
「スネイル、何してるんだ」
「何してるだ、ではありません！ あなたがまたやらかしたというから私がこうして直々に謝罪に来ているんでしょう！ さっさと帰りますよ！」
「え、いやだけど」
「はぁ！？」
「ここに住むことにした。後で荷物を運んでくる」
視界の端で、ウォルターが見たことないような顔をしている。
「馬鹿なことを言ってないで戻りますよッ！」
「うちのシミュレータ元に戻るなら帰ってやる」
「いいでしょう！ その程度、どうにかしてご覧に入れますッ！」
「言ったな、約束だぞ」
またな、と別れの挨拶をしながらスネイルに引きずられていく彼を見送る。
「全く、騒々しいことだ。621……」
叱られるか、と身構える。やはり黙って連れてきてしまったのはまずかったか……。
「次はしっかり連絡を入れろ。……茶と菓子を用意しておく」
意外な答えに、ふっと肩の力が抜ける。
「わかった」
次があるなら、そうしよう。 ]]>
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